ローカルのレディースが試合の合間にお菓子を食べながらつぶやくダブルスのお悩み。全日本クラスの卓球選手なら何と答えるのでしょうか? 全日本卓球選手権女子ダブルスで5度優勝の実績を持つ藤井寛子さん伺いました。
ダブルスパートナーは友達以上恋人未満?
私は卓球人生をReスタートした瞬間からダブルスをこじらせております。ブログ「掟破りの夫婦ダブルスで先人が遺した教訓に触れる」でも、我が身に起こったダブルスの災難を赤裸々に綴っておりますもので。夫婦で組まないペアの第一人者として認知も広まっていることでしょう。
とはいえ、PTAの卓球部に所属し、ローカルの大会に参加していると、ダブルスに誘われる機会の多いこと。練習していない時に限って、バック粒高、超変化表の方にお誘いを受けます。お調子者の私は、自分をパートナーに選んでくれたことに喜びを感じ、前のめりでOKするのですが、試合が始まると後悔の念が押し寄せます。
「やばい、サーブ全部フリックされる」
「やばい、レシーブ全部浮く」
「やばい、チャンスボールが全部わたしのところに回ってくる!!!」
やばいやばいやばーい&ごめんごめんごめーん
パートナーは私を相方に選んだことを後悔していないかな? また「一緒に出よう」と声をかけてくれるかな? さんざんな試合が終わると、そんな恋愛感情に似た切ない気持ちが沸き起こり、ラブソングの神様・古内東子の歌を口ずさみたくなります。
「優しくされると、切なくなる~冷たくされると、不安になる~♪」これは、この曲は、20代の若い恋人同士ではなく、40代のおばちゃんペアのために作られた曲ではないのか???
「誰よりも(卓球が)好きなのに」このままじゃいけないと、ラブソングの神様ではなく、ダブルスの神様・藤井寛子さんにアドバイスをいただき、Q&Aにまとめました。どの回答もピンチをチャンスに変える金言ばかり。パートナーとのペアリングも良くなる予感しかしません。全日本クラスのダブルスマインドを頭に叩き込んで、「ダブルスパートナーに選んで正解」と言われる卓人を目指しましょう!
藤井寛子さんにダブルスの心技体を質問
-
相手のミスが続いた時は、なんと言って励ませばいいですか?
-
相手がミスをした時は「ドンマイ」のかわりに、私は「ごめん」と声をかけるようにしています。パートナーはサーブレシーブや私が打ったボールが引き金で、うまく返球できなかった可能性もあるからです。「相手がミスをした」という解釈ではパートナーと良好な関係を築くことはできません。お互いが「ごめん」という言葉で相手を気遣うことから始めましょう。
-
パートナーのバックが異質ラバーで、返球に困るときがあります
-
パートナーがフォアとバックのどちらで打ったかをしっかり感じ、どんなボールが返ってくるかをイメージしておきましょう。例えば「浮いてきたらスマッシュしよう」「低いボールならツッツキしよう」など、ダブルスは仮想を立てて準備をすることがとても大切です。これはパートナーが異質タイプに限らず言えること。ボールが戻ってきてからの判断では遅いことを心得てください。
-
自分の調子が悪い日はどのように戦えばいいですか?
-
調子が悪く、ボールが決まらない時は無理をしないこと。事前にパートナーに自分の状態を伝えておきましょう。「フォアドライブが入らないからバックにボールを集めて」など、正直に伝えることで、最善の戦術が立てられます。パートナーも「今日は自分が勝負しよう」と準備してくれるはずです。
-
ダブルスの3球目攻撃は緊張します
-
「練習してきたことを自信もってやる」と心に決めてコートに入りましょう。練習の際は、パートナーが生み出すサーブのリズムに乗って打つことを意識して。具体的には、パートナーがサーブを打つタイミングで少し飛びながら前に入る。大縄跳びで、ぴょんと飛びながらタイミングよく中に入る感覚に似ています。リズムをとりながら、つなぐべきボールはつないで、攻めるなら迷わず攻めましょう。
-
サーブを決めるのはサーバーとレシーバーどちらの役割ですか?
-
サーブはパートナーと二人で相談して決めましょう。サーバーが「この場面はこのサーブがベスト」と判断しても、2球目で打たれてしまう、変化の残ったボールが返ってくるではパートナーに迷惑をかけてしまいます。お互い気持ち良くダブルスをするためにも、試合の前や合間にコミュニケーションを。
-
パートナーがチャンスボールをミスするとがっかりします
-
チャンスボールは置きに行く選択肢もあります。勇気を出して攻めてくれた相手に、「チャレンジしてくれてありがとう」と感謝の気持ちを伝えましょう。ダブルスのペアリングは、お互いの気持ちが上がるとさらに良くなります。相手を気遣う言葉を積極的にかけて、“最高のペア”と言える関係性を築いてください。
監修:藤井寛子
1982年生まれ、奈良県出身。平成18年度、全日本卓球選手権女子ダブルスで金沢咲希選手とのペアで初優勝、平成21年度~24年度、若宮三紗子選手とのペアで4連覇と、5度の優勝を果たす。現在は日本卓球アスリート委員会副委員長、同ホープスナショナルチームコーチ。著書に「卓球ダブルス解剖図鑑」(株式会社エクスナレッジ)がある。