「練習が全然できてないの~」と言いながら、明らかにレベルアップしている闇連専門のレディースたち。そう、彼女たちのバックには個人レッスンが得意なコーチがついているのです。予約待ちしてでも教わりたいスゴ腕コーチとは? その人気の秘密に迫ります。

卓球以外の相談もOK! ここはレディースの駆け込み寺

古今東西、女子は聞き上手な男子に弱いですよね。

日本最古のモテ男・聖徳太子がそうなんだから仕方がない。

独身時代、美女と野獣のようなカップルに出くわすと、「あの男は絶対聞き上手や。女友達の長くてオチがない話に合わせてひたすらウンウンと側で頷き、失恋や転職で女友達のバイオリズムが乱れた瞬間にウンウンの波長を増幅させて友達から彼氏へと昇格した。わたしにゃわかる」と二人を霊視しておりました。

そして今ここに、卓球界の聞き上手王を目指す男と出くわしてしまった。OHANA卓球場の代表・小野達也さん(34歳)。個人レッスンの6~7割の時間を練習、3~4割をお悩み相談にあてるというカウンセリング重視のコーチです。

「僕は聞ける指導者になりたいんです。練習そっちのけで『今日こんな料理作った~♪』という話を20分されたこともあるんですけど、お客さんが満足してくれたらそれでいいかなと」。

小野さんは、レッスン終わりに「もう卓球辞めたい」と語る弱気な強者レディースの相談に1時間半つきあったこともあるそう。(これを書きながら胸に手を当てる自分がいる……)。普通の人ならさっさと切り上げたくなる状況。でも、小野さんは時間を気にせずひたすら話を聞きなぐさめました。

「女の人は正論をぶつけられるよりも、ただ話を聞いてほしいんだと思うんです」。

さすが小野さん、よくわかってらっしゃる。

そんなローランド級の女心掌握術を小野さんが身に着けたのは病院勤務時代、実業団・NTT東日本引退と同時に卓球を辞め、理学療法士として働く中で話を聞くことの大切さに気づいたといいます。

「理学療法士は患者さんの一番近くにいる存在。先生や看護師に言えないことも、僕にだったら話せる。そういう空気を作らないと、患者さんが言うことを聞いてくれない。リハビリをしてくれないんです」。

小野さんは理学療法士を極めるため、聞き上手に徹しました。そしてもうひとつ、明るく接するスキルも磨きました。

「理学療法士は明るくないとダメですね」by小野さん

それでなんですかね? 

個人レッスン時の小野さんは、とにかく明るい。

自分のボールが決まると「よーっし。もういっちょう」と全力で喜びを表現し、生徒さんがミスすると「もぉ~なにやってんのぉ~」と全力でつっこみます。その高いテンションとデカい声はまるで駆け出しのガヤ芸人。ひな壇から前へ前への精神に圧倒され、酸いも甘いも嚙み分けたベテランレディースも「参りました」と言わんばかりに笑い出します。

こちらから引きで見ると、レッスンというよりは、アミューズメント施設の卓球コーナーで楽しく遊んでいるような雰囲気。

しかしながら、寄りで見ると、小野さんは生徒さんの立ち位置、ラケット角度、ボールの打点、一球一球逃さずにガン見しています。

「生徒さんが気づいていないところを気づかせてあげるのが僕の仕事。特に女性は超前陣の人が多いので、ロングサーブや引きつけて打つボールがとれない。立ち位置から指導することが多いですね」。

友達とワイワイ楽しく遊んでいるような雰囲気を醸しつつも、「立ち位置」「角度」「打点」と細やかにアドバイスを送る小野さん。生徒さんも微調整を繰り返し、一球ごとにフォームがよくなっていきます。

もしやこれは……「遊び感覚で勉強が身につく」「楽しみながら成績UP」「おもしろおかしく学べる」そんな学習塾のキャッチコピーに心がぐらつく母親レディースにもってこいの個人レッスンでは???

根が明るい性格だからできるレッスンですよね~と小野さんに話しかけると、

「そうじゃないんです。僕はけっこう考え込むタイプなんですよ」とぽつり。

ここにきて天真爛漫キャラの大前提を覆すひと言が小野さんの口から飛び出しました。

↑卓球のレッスンだけでなく理学療法士の観点から靴選びのアドバイスをすることも。「外反母趾の方はフラットな靴底を選んで」。

星空の下でソロキャンプ。小野コーチは意外とロマンティスト?

「なんでもストイックにやってしまうので、あとからヘコむことも多いんです。お客さんに対しても、今日は自分のことしゃべり過ぎたかなぁ~って反省したり……」。

私は小野さんの違う一面を見て、いつもテンションMAXなサンシャイン池崎のオフタイムを見た時以来の衝撃を受けました。生徒さんの前でプロとして明るくふるまいつつも、根は真面目な人だったんですね。

そんな小野さんの最近の趣味はソロキャンプ。軽井沢や尾瀬、さらには電波の届かない秘境へも一人で行くのだとか。

「いつも考え過ぎちゃうんですけど、キャンプに来ると心にブレーキがかけられるんです」。

澄んだ空気を吸いながら、瀬音に耳を傾けながら、星空を見上げながら、心を無にして過ごす小野さんを思い浮かべると、「僕は聞ける指導者になりたい」の言葉の本当の意味がだんだんとわかってきました。

自身も悩みごとがいっぱいあるから、お客さんの悩みを聞いてあげたい。そんな思いやりも聞き上手王を目指す理由のひとつなんでしょうね。

「女性はまじめな方が多くて、完璧を求めすぎるところがあります。レッスンで冗談を言うと、曇った顔がパーッと明るくなって心もマイルドになられるんです。卓球がうまくなられるより嬉しいかも」。

お客さんに明るく楽しいエネルギーを与えながら、返ってくる明るい笑顔で小野さんの心も晴れる。そんな好循環が想像できるセリフ。

小野さんはコーチと生徒という関係性、なんだったら卓球の垣根も越えて、人同士のハッピーなつながりを求めてるんじゃないかな。

だって、ここはOHNA(絆でつながる家族)でしょう?

↑卓球界のソロキャンパーとしてマウントをとりたいと意気込む小野さん。

小野達也コーチ

埼玉工業大学卒業後、実業団・NTT東日本で活躍。引退後は理学療法士の資格を取得し、病院に勤める。その後、パラ卓球の櫨山七菜子選手のコーチを経て2019年12月一念発起して埼玉県秩父郡にOHANA卓球場をオープン。

OHANA卓球場 個人レッスン 1時間 5,000円
埼玉県秩父郡皆野町大字大渕311-1
TEL 080-7008-0150
https://tts-ohana.com/