こちらは『卓球レディース』編集長の西村が、NOルールで綴る馬鹿馬鹿しい卓球日記です。今回は自分のクリスマス人生について振り返りました。2021年のクリスマスは卓球色。

12月24、25日は女子にとって一年で最大のイベントデーであります。そう血湧き肉躍るクリスマス。学生の頃、この二日間にバイトのシフトを入れた娘を見たことがありません。店長が「時給上げるから誰か入って~」と泣きわめき、クリスマス当日、粛々と働く私を見て。

店長「西村さんがいてくれてよかったわ~」

と肩をもんで、賞味期限切れのケーキを持ち帰らせてくれました。

社会人になってからは、この二日間に有休をとる娘しか見たことがありません。上司が「年の瀬に休まんといて~」と泣きわめき、クリスマス当日、粛々と電卓をたたく私を見て。

上司「西村さんがいてくれてよかったわ~」

と肩をもんで、得意先からいただいた卓上カレンダーを持ち帰らせてくれました。

世間は「ラーストゥクィスマス。アイゲリマイラ~♬」と「サイレーンナーイウォーウォーケン♬」のBGMに心を躍らせ、予約のとれないホテルを予約し、サプライズのケーキを搬入し、ティファニーでオープンハートの指輪を購入しているというのに。

私は一体何をしていたのでしょうか?????

主婦になってもクリスマスはいつもと変わらぬ日常を過ごし、社会が抱える問題のひとつ、24、25日の人手不足に「まかせんしゃい」と一人で立ち向かい百人力の労働力を発揮。それはそれは重宝されました。クリスマスシーズン限定の戦力として。どこの会社でもエース起用。オーダーから外されたことはありません。

だけど今年は、今年だけは仕事を休んで外の世界へ繰り出そうと計画しておりました。『卓球レディース』の運営に夢中になってしまい、小学生の子供と接する時間が激減。この二日間は子供と一緒に特別な時間を過ごそう、思いっきり甘えさせてやろうと心に決めていたのです。

そんな折、Twitterから卓球コラムニスト・伊藤条太さんが開催される大阪の「卓球歴史講座」の案内が流れてきました。「面白そう。場所も近くだし行きたい!」とイイネしましたが、日を見てズッコケました。開催日は12月25日。

なんでクリスマスに開催するのでしょうか?????

恋人との甘いクリスマスデート、大切な家族とのクリスマスの団らん、仲間とワイワイ過ごすクリスマス会。大富豪のジョーカー級のリッチなプランが並ぶこの日に、「卓球歴史講座」というニッチなカードをぶち当てるなんて、こんなにも強気なイベンターには出会ったことがありません。

私は迷わず「大切な家族との~」のカードを選びました。予定通り。だって子供が私の相手をしてくれるのは小学生の今しかない。今年は世間様と同じテンションでクリスマスをクリスマスらしく過ごすのです。るるぶのモデルプランのように、当日は子供とクリスマスカラーのペアコーデを楽しむのもイイネ。一緒に御堂筋のイルミネーションを撮影しに行くのもイイネ。クリスマスマーケットへ行って食べ歩くのもイイーーーーーネ!(横山剣風)

2021年12月25日クリスマス当日

私は卓球の歴史年表が映し出されたスクリーンの前に座っていました。1900年に卓球が誕生し1902年に日本へ伝来。体育学者の坪井玄道が日本に卓球を紹介したのだとか。伊藤先生から「ここはテストに出ます」と要点も教えていただきメモを取りました。いや~卓球の歴史は面白くてためになる。子供に「25日は試合がある」と親子デートをキッパリ断られてよかったよかった。

ってアレ、想像していたクリスマスと全然違う?????

一瞬、母親の顔に戻りましたが、再び卓球女子の鉄仮面をかぶりました。卓球の歴史を選択科目にした受験生なら垂涎ものの情報があふれている。不埒な思いに学びの姿勢を崩されてなるものか。私は向学心から食い気味で年表を撮影。画像を確認するとスクリーンが光の加減でホワイト×ティファニーブルーに発色していました。

あれ、あれあれれーーーー。(フラッシュバック)

女心をくすぐる淡いブルーグリーンの箱。それにかかった白いリボンを解いて胸を躍らせたクリスマスの記憶。ベルベットの巾着を開けるとオープンハートのネックレスが光り輝いておりました。あの時は頬を紅潮させて「嬉しい。ありがとう」とお礼を言ったなぁ。うんうん。

親戚のおばちゃんからのサプライズギフト。「これで恥をかかへんやろ!」と言わんばかりのおばちゃんのドヤ顔。その時初めて知ったのです。年頃の娘がクリスマスを一人で過ごすと親族が心配するということを。おばちゃんに余計な気をつかわせてしまった自分が恥ずかしくて顔が真っ赤になりました。

その時私は、二度とおばちゃんに心配をかけまいと、世間様のクリスマスルーティーンに倣うと誓いました。「クリスマスは大切な人と七面鳥を食べたり、ケーキを食べたり、プレゼントを交換しよう」と。しかし、その後もクリスマスは守銭奴のように一日を惜しんで働き、母になった今はジョーカーではなく、「卓球歴史講座」のニッチなカードを引き当てました。今の私を検索したら、位置情報は間違いなく卓球cafe&bar「Palette」。2021年の12月25日は赤×緑のクリスマスカラーでもなく、ホワイト×ブルーグリーンのティファニーカラーでもなく、豊富なカラーパレットの中から卓球色を選んだのです。

私っぽいな。

講座開始から1時間がたった頃、伊藤さんから「大丈夫ですか? 眠くないですか?」とツッコミが入りました。私の脳は過去現在のクリスマスを行ったり来たりして疲れたのでしょう。あくびの涙が頬を伝わっておりました。やっべぇー。

来年のクリスマスは何してるんだろう?