卓球は迂回してライフスタイルの話題へ。レディース世代の卓球選手の過去・現在・未来がわかるインタビューコンテンツ「今月の卓球レディース」。5月のゲストは成本綾海さん。今回は珍しく恋バナを深掘りしました!

寿ぎのくされ縁カップル 新郎新婦は同期の卓球選手

優美なマーメイドラインのウェディングドレスに身を包み、清楚なカラーのブーケを手にほほ笑む女性。昨年末に発信されたSNSの投稿で、その美しさにため息をもらした人も多いはず。写真をご覧の通り、京都カグヤライズの元Tリーガー・成本綾海(31)さんだ。

そのお隣に立つ新郎は、綾海さんと同い年の元卓球選手・中村圭介さん。お二人は昨年の12月に式を挙げ、現在、綾海さんは卓球コーチとして、圭介さんは地元役場の職員として滋賀県で働いている。気になるのはズバリお二人のなれそめ。というわけで、卓球ライターではなく、おばちゃんライターの好奇心で恋のいきさつを深掘りしてしまった。卓球選手同士の恋愛&結婚とはいかなるものなのか。今回は桂三枝気取りで「新婚さんいらっしゃ~い!」

桂三枝が転がる姿が目に浮かぶ? なぜか友達以上になれない男

新郎新婦の出会いは高校生の頃。当時、綾海さんは大阪・四天王寺高校、圭介さんは兵庫・滝川第二高校の卓球部に所属していた。関西の強豪校同士ということもあり、大会会場で顔を合わせる機会も多かったお二人。綾海さんに圭介さんの第一印象を聞くと「とにかく“いい人”」だったという。自分のことよりも周りの人たちのことを優先する優しい性格。卓球に夢中で恋愛には興味がない雰囲気だったそうだ。

一方で、綾海さんは少しとがった男子に憧れる女子だった。少女マンガに登場するヒーロー役の不良男子が理想に近い? なにしろ当時の綾海さんの趣味は恋愛マンガを読むこと。練習やランニングをサボって監督に怒られる、携帯電話を没収されるなどの制裁を受けても、マンガの世界に没入して自身の恋愛観をふくらませていた。ゆえに、“いい人”の圭介さんは恋愛対象ではなく、友達のひとりだったそうだ。

「なるほど!」と、私はここまでの話を聞いて膝を打った。

「男友達がパートナーに昇格するパターンですね。恋愛はカッコいい人、結婚は誠実な人がいい。ということですよね?」

私は話をまとめようとした。すると、ここで意外な事実が発覚した。

なんと、圭介さんは“いい人”よりも、“イケメン”で有名な男子だったというのだ。大会の会場で圭介さんが現れると、「あの人、イケメンじゃない?!」と女子がザワつくことも。ところが圭介さんに女性の影はなく、「あのイケメンはゲイだ」と噂がたったこともあるそうだ。

「なるほど!」と、私はここまでの話を聞いて膝を打った。

「優しくて、イケメンで、女性の噂もない。そんな男は逃しちゃダメだ。そういうことですよね?」

私は話をまとめようとした。すると、ここでさらなる事実が発覚した。

なんと、圭介さんは頭も良いというのだ。高校時代から勉強が得意で、卓球も何球目先まで考えた頭脳プレーが秀逸だという。

むむむ。。。

優しくて、イケメンで、女性の噂もなくて、頭も良くて、卓球が上手で。これはもしや、もしや……

SHINKONNONOROKE( ゚Д゚)

イスから転げ落ちる前に話しを元に戻そう。

夜空のインターチェンジ。ここから愛が始まった

高校卒業後、綾海さんは同志社大学~中国電力へ、圭介さんは立命館大学~フジへと進んだ。結婚相談所のカウンセラーなら会員登録を懇願したくなるほどの高学歴&実業団のハイスペックをまとったことになるが、お二人はここからなぜか恋愛をこじらせてしまう。

「中国電力に入った時が一番卓球を頑張りたい時だったので、恋愛を忘れていました」と話す綾海さん。卓球1本で行きたい。その強い思いから、京都カグヤライズに所属しTリーグにも参戦した。気がつけば28歳。あと、1、2年で引退を。そんな気持ちの整理をし始めたころ、綾海さんは圭介さんに聞きたいことがあり数年ぶりにLINEした。そのメッセージのやりとりがきっかけとなり、綾海さんは圭介さんの誘いで滋賀県から国スポに出場することが決まった。

綾海さんは滋賀に住むのが初めて。慣れない土地を圭介さんに案内してもらいドライブデートを重ねるうちに、綾海さんは圭介さんのことが気になるように。そんなある日、圭介さんが滋賀から綾海さんが予定する大阪へ、わざわざ車で送ってくれると言った。「もしかして脈あり……?」綾海さんの鼓動が高まった。断る理由はない。綾海さんが圭介さんの言葉に甘えると、二人を乗せた車はそのまま夜空の高速道路を渡った。窓の外にはオレンジの河が走る。走る。走る。渋滞の灯りが溜まっていくとインターチェンジが近づく合図。駆け引きはいらない。

綾海さんは自分から切り出した「好きです。つきあって」と、
すると圭介さんは横顔だけで「いいですよ」と言った。

そう、街中が深い海の底に沈むハイウェイで静かに始まったお二人の恋愛。平静を装いながらも圭介さんはかなり動揺していたのだろう。高速を降りても、その速いスピードを保ったまま一般道を爆走し、目的地にたどり着く前に、中村圭介さんはスピード違反で捕まった。

男女の脳の構造の違い? 計画的な男と成り行き任せの女

圭介さんが動揺した理由はほかにもある。圭介さんは超・計画派で、物事が計画通りに進まないと気が済まない性格だった。綾海さんとも、あと1回デートしたら自分から告白しようと考えていた。それなのに、告白計画がうれしくも打ち砕かれ、先を越されてしまったからだ。

「夫は人生を計画的に進めたいタイプですが、私は流れに身を任せるタイプ。その性格の違いに夫は戸惑いもあったそうです」。

圭介さんは25歳で結婚、27歳で子供を授かるといった人生設計を立て、計画通りにいかない人生をもんもんと歩んでいた。それに対して綾海さんは、監督の誘いで大阪の四天王寺中学に進んだ頃から、人とのご縁で人生を紡いでいくタイプ。成り行き任せの女心は、交際期間中、男心を大きく揺さぶった。

例えば、いきなり遠距離恋愛。交際が始まって間もなくのこと、綾海さんは知人から「ポーランドのチームが日本人選手を探してる」と聞くと、圭介さんを置いて新たな戦場であるポーランドへと旅立った。腰のケガの療養で2週間おきに帰国する予定だったので、圭介さんには心配をかけないと軽く考えていたのだ。しかし、これは勝手な想像だが、恋愛に奔放なヨーロッパの卓球シニョールに彼女をとられないか心配で、圭介さん祈るような気持ちで綾海さんの帰りを待ちわびていたのではないだろうか。圭介さんは綾海さんが帰国するたびに関西国際空港へ車を走らせた。

そして、綾海さんがポーランドリーグから帰国し、年が明けると圭介さんはすぐにプロポーズした。ある日の残業帰りに、綾海さんが欲しかったネックレスを渡してプロポーズしたのだ。特別な日でもないのに突然の告白。今度は綾海さんが動揺した。恋愛マンガを読み込んできた綾海さんの理想は、ゆったりとした時間を過ごす旅の途中で、美しい景色を背にしたプロポーズ。その2ヵ月前、ふたりで温泉旅行にいったときは、結婚の雰囲気を匂わせなかったのに、なぜいま???

「このタイミングしかないと思ったのでしょうね」と成本さん。

おそらく、圭介さんは攻めのタイミングをずっと見計らっていたのだろう。綾海さんから繰り出される突然の「好き」「ポーランド行く」の変化ボールをしのぎながら。綾海さんが強烈なフォアドライブを放つ前に、圭介さんは自分から決める覚悟でいたのだ。そして訪れた彼女のスキをつけるチャンス。平日の23時、圭介さんは不意をつく一本を決めた。第二の人生を賭けた大勝負は圭介さんに軍配が上がったのだった。

夫婦の卓球対決は続くよ、これからも

結婚式から4カ月がたった。お二人の新婚生活を聞くと、やはり卓球が中心のようだ。週末になると、圭介さんは綾海さんよりも早く起きて、けんすいとランニングをしっかりと。そのあとは近くの体育館で2~3時間の夫婦卓球。1コースのドライブから始まる圭介さんお決まりの練習メニューに綾海さんがつきあっているそうだ。

「練習が終わると、必ず『ゲームしよう』と言われます。でも、9-9になると、私がほとんど勝ちます。7-9からでも逆転勝ちできます」と綾海さん。圭介さんは試合でも“いい人”が出て勝負弱いと語る。何球目先まで考えた圭介さんの計画的なプレーは、綾海さんの試合の流れに応じた変化表のナックル技でとことん崩される羽目になっているのだ。

「いつも大事な場面でミスをしてくれるんですよね。卓球だけでなく、結婚式でも結婚証明書にサインする時に、新婦のところに名前を書こうとして、列席から笑いが起きました」。

綾海さんはそう言うと楽しそうに笑う。ゲーム練習でもプライベートでも、和やかで睦まじいお二人の姿が目に浮かんだ。10年、20年後はもっとおもしろいご夫婦ネタがたまっているに違いない。その頃には私も桂三枝ではなく、藤井隆を気取っているだろう。ゲームの勝敗も含めていろいろなお話を聞ける未来が楽しみだ。

成本綾海
1995年岡山県生まれ。四天王寺中学・高校で卓球の腕を磨き、インターハイでは団体戦で優勝。その後、同志社大学時代に全日本学生卓球選手権大会でシングルス優勝。中国電力ライシス時代は、全日本社会人卓球選手権大会でダブルス優勝、全日本卓球選手権大会でダブルス準優勝を果たす。Tリーグでは京都カグヤライズで活躍。2025年国民スポーツ大会では成年女子で準優勝し、同年に引退と結婚。現在は滋賀県でプロの卓球コーチとして活動している。レッスンの予約はこちら「滋賀県 卓球スクール NARU cube」https://narucube.studio.site/