こちらは『卓球レディース』編集長の西村が、NOルールで綴る馬鹿馬鹿しい卓球日記です。真夏にひと時の涼感を、家計を預かる主婦ならではのゾッとする話をお届けします。

うちは家族共通の趣味が卓球です。「家族で楽しめるスポーツがあっていいですね!」とよく言われるのですが、一緒に練習することはほぼありません。それぞれのホーム(卓球場)でそれぞれの卓球仲間と打つ。ゆえに夫や子供が今どれくらいのレベルに達しているのか逐一把握しておりません。

ゆえに、たまに家族一緒になる卓球機会があると驚くことが多々あります。

先日も久々に夫の試合を見に行ったところ、「ちょっと預かってて」と夫が私の膝にラケットを置いていきました。それを手にした瞬間、背筋が凍りました。バルサ材のラケットにブルーラバーが貼られていたのです!!!

夫は卓球を始めてわずか3年。スワット×ライガンという初級者の定番用具からスタートして、このマニアックな武器にたどり着くまで、どのような用具の変遷をたどってきたのでしょうか? それを想像すると恐ろしくて、ラケットを持つ手が震えました。

隠しごとのない夫と信じていたのに、私に内緒で用具遊びをするだなんて、なんという裏切り行為。サザエさんがマスオさんの背広の内ポケットからスナックの名刺を見つけた時くらいの衝撃を受けました。

恐怖のあまり言葉を失っていると、夫の練習によくつき合ってくださるHさんが話しかけてきました。

Hさん「旦那さんにバック表に戻すように言ってあげて、今のラバーはあってないと思うわ」

私「えっ? バックは表でしょう」

Hさん「違うよ」

私「???」

私はラケットを持つ手をひっくり返してさらに驚きました。バック面にキョウヒョウが貼られていたのです。この間までバックは表だったはずなのに、いつの間にかアッパークラスの粘着とはこれいかに??? 試合で見た夫のバックハンドは完全にミート打ちだったので、まったく気がつきませんでした。

さらにHさんから、夫がバック面を表にしたり裏にしたり、ラバーをコロコロ替えているとのタレコミも入りました。

Hさんの話が気になった私は、家に帰るとすぐに卓球用具が入っているボックスを開けました。すると中から出てくる出てくる。およそ160×160mmの半円型に切り取られた表ラバーが、「まだ使えますよ」と言わんばかりにお行儀よく粒をそろえてスタンバイ。メジャーからマイナーまで、各メーカーの代表的な表ラバーがあろうことか一般家庭の収納に揃っておりました。その量は汗かきな夫のTシャツの枚数と≒。

同じくして裏ラバーも……。これは数えないことにしましょう。主婦という生き物は暗算が得意ですから、一体何枚のラバーをむさぼってきたのか、その総額が瞬時にわかってしまうのが恐ろしい。

この夏のホラー体験、それは良く言えば「夫の卓球に対する偏愛レベルが急成長している」、悪く言えば「ラバーに金つこてる」ことに気づいてしまったこと。この右肩上がりの直線は、実力と反比例しながらこれからも上昇を続けることでしょう。

そして、まだ小学生の子供はこれから生涯に渡り卓球を続けると、160×160×2mmのラバーでマリアナ海溝が埋まるでしょう。(お願い、社会人になってから高いラバー買ってネ)。

以上、卓球場のエアコンの効きが悪くても思い出せば汗が引く、家計を預かる主婦のゾッとした話でした。