「練習が全然できてないの~」と言いながら、明らかにレベルアップしている闇連専門のレディースたち。そう彼女たちのバックには個人レッスンが得意なコーチがついているのです。予約待ちしてでも教わりたいスゴ腕コーチとは? 人気の秘密に迫ります。
親切&丁寧が神の領域!
卓球場の初回訪問は緊張します。コーチ取材当日、卓球場の入り口を不審者のようにウロついていたら、「こんにちは!」と元気よく声をかけてくれる好青年が登場。「どうぞ座ってください」と私に丸イスを出してくれました。なんという神対応。私は拾われた野良猫のように喉をならしてしまいました。こうなったら技術指導なんて評価の対象外。無条件であなたを専属コーチに一位指名させていただきます。以上。
では終わらない。もっと話を聞きたくなった卓球家840のコーチ・中島亮介(29)さん。明るくて笑顔が素敵な好青年ゆえに、話をすればするほど印象との乖離が生まれます。なぜって数字の記憶力が半端ないんですよ。世界選手権や世界ツアー、Tリーグ、主要な大会のスコアや製品の発売年月をほとんど覚えてらっしゃる。アマチュア知識人がわんさかいる卓球界では珍しいことではないはずなのに、なんだろうこの違和感。
モヤモヤしていると、840のオーナーが「めったに見ないでしょう。こんなに爽やかなマニア」とズバリ。そう、それが言いたかった。生絞りのレモンサワーのように弾け飛ぶ卓球マニア。「趣味も卓球です。家に帰っても卓球のYouTubeを見たり、『卓球王国』を読んだり、試合動画を見たり、研究ではなく娯楽です」と中島さん。字面を見るとドン引きなコメントなんだけど、顔を見ると櫻井翔。このギャップに萌えるレディースも多いのではないでしょうか。
ひと目見たいのは東京タワーではなくタマス本社
中島さんは北海道の名門・北海道尚志学園出身です。社会人になってからは地元のクラブチームに所属。趣味として卓球を楽しんでいるうちに卓球を仕事にしたいという思いが芽生えました。そんなある日、SNSでコーチの求人情報を見つけ、一念発起して飛行機に乗り遠く埼玉県まで面接へ。
「10人以上の人が応募していたので、落ちると思いました。もう二度と関東に来ることはないなと」当時を振り返る中島さん。最後の思い出作りにと面接の翌日、東京観光へ出かけました。この時、中島さんが訪れた名所は東京スカイツリーでもない、ディズニーランドでもない、阿佐ヶ谷にあるタマス本社。ビルに留まるマゼンタ色のバタフライを追いかけて近づくと……。
「1階のガラス張りの外装を見た時はスゲーと感動しました。バタフライの動画で選手が試打をしているその台が外から見えるんですよ」。初めてスーパーカーを目にした少年のように瞳をキラキラと輝かせて語る中島さん。その後、採用の知らせを聞くと新生活への切り替えはマッハ。仕事を辞め、彼女にプロポーズし、新居を決め、結婚して一緒に埼玉へ移り住みました。普通の人なら半年くらいかかるコースを一カ月の短期間で駆け抜ける。それもこれも卓球を仕事にするための巻き巻きスピード。
「大好きな卓球の仕事に携われて毎日が充実しています。レッスン後に『うまくうてるようになった』と感想をもらうとやりがいを感じますね」と中島さん。コーチになって2年半。マニア臭を消す爽やかさでこれからもレディースファンを増やしてくださいまし。
実際に指導を受けると……
ラリーを一球返すごとに「よし、よし」と声をかけてくれる中島さん。オーナーが「対応が丁寧」と太鼓判を押すほど、きめ細やかに指導してくださいます。「片面ペンのバックフリックを教えて」と無茶なお願いをしても受け容れてくれる懐の広さ。長年接客をされていたからかホスピタリティ精神の高さには頭が下がります。
中島亮介
北海道尚志学園(北海道科学大学高校)出身。左シェーク裏裏。卓球家840八潮店でレディースやジュニアの指導にあたる。個人レッスン(1時間)4,600円(別途ボール代110円) https://www.takkyuya840.com/