企業で地道に活動する卓球部に光を当てたインタビューコンテンツ「行け! 〇〇会社卓球部」。このたび取材したのは卓球ガチ勢が集まる実業団・百十四銀行卓球部。とはいえ、今回も学生の部活とは似て非なる大人の青春ストーリーをお届けします!

百十四銀行卓球部のメンバーは百花繚乱

百十四銀行の卓球部は昭和38年に創部。今年で62年目を迎える。その歴史ある卓球部の練習環境に2年前大きな転機が訪れた。運動部員の働き方改革により、午後からの練習が業務として認められ、練習の終了時刻が大幅に前倒しとなったのだ。業務終了後に行っていた規定練習が定時に終わると、妙齢女性たちのライフスタイルはどう変化するのか? キャプテンの小脇瑞穂さんに部員のおはなしを聞きながら、彼女たちの練習後の過ごし方を憶測することにした。

キャプテン小脇瑞穂のごはん事情

まずはご本人であるキャプテンの小脇さん(右シェーク裏表)のおはなしから。百十四銀行卓球部のごはん担当と名乗る彼女は、卓球の「1本入らない……」のストレスを食べることで解消する卓球部の爆食女王。「遊びに行こう」という誘い文句を「ご飯食べに行こう」の意味で使い、休日は小鉢多めの定食を食べた後に、ケーキを食べに行くのが楽しみなのだとか。「たくさん食べて体重を増やせば、ボールも重くなると信じていたもので」。ボールが重くなるのは体の使い方によるものだと気づくまで時間がかかったという小脇さん。遠征先のホテルでは朝食バイキングの会場で、おかず山盛りのお皿を持ち歩く彼女の姿を目撃した人もいる。私が小脇さんに「練習が早く終わるようになって、変わったことは?」と尋ねると、「お風呂に浸かる時間が長くなりました」と可愛く答えてくれたが疑わしい。この2年で彼女の体重が増えていないか心配だ。

まじめを極める永目真唯が選ぶラバーは?

そんな小脇さんを追って、百十四銀行に入社した人がいる。学生時代から小脇さんの後輩である永目真唯さん(左シェーク裏表)だ。彼女は百十四銀行卓球部のまじめ担当。それもそのはず。高校時代の永目さんは、学年で首席になるほど成績優秀。証券外務員やファイナンシャルプランナーなどの資格を入行前に取っておくなど準備にもぬかりがない。「もしかして練習後は資格の勉強をしてるのでは……?」私と小脇さんの憶測は一致したが、果たしてどうなのか? 卓球も勉強もできるうえに性格も良いと聞く。「すみません」が口癖で、ひとラリー終えるごとに謝ってくるというのだ。ここまでまじめを徹底されると近寄りがたい雰囲気に思えるが、バックに異質表を貼っていると聞いて、人の血が通っていると安心した。

試合時のキュートなネイルに注目! 岡崎日和

百十四銀行卓球部には永目さんとはキャラが対照的な人物もいる。ギャル担当の岡崎日和さん(右シェーク裏裏)だ。大きな瞳にがっつりアイラインが印象的な彼女は、ネイルが大好き。日本リーグ出場の際は、チームメイト全員のイニシャルと銀行キャラクターのバーバパパをネイルにデコって戦い抜いたほどだ。そのネイル代は総額1万円。高いのか安いのか相場がわからないが、仲間への愛情表現の新しさに脱帽させられる。そんな彼女はネットショッピング担当の一面も。「岡崎さんの玄関に置き配をよく見かけて」と話す隣人の小脇さん。岡崎さんの帰宅が定時になったことで、このエリアの宅配業者の仕事が増えているのではないだろうか。

卓球選手は素肌が命! 大川千尋

メイク好きが岡崎さんなら、スキンケア好きはこの人。百十四銀行卓球部の美容担当である大川千尋さん(右カット裏粒)だ。練習場で「この化粧品いいよ!」と、大川さんが周りに愛用品をすすめている声を聞いた部員は多いことだろう。小脇さんも大川さんが持っている化粧品を完コピするほど、美容においては大川さんに絶大な信頼を寄せている。小脇さんいわく、これまで大川さんにすすめられた化粧品の中で、ニードル系の導入美容液が大当たりだったとか。大川さんは陰ながら卓球部員の美肌づくりに貢献しているのだ。家で過ごす時間が増えたことで、大川さんのお肌と向き合う時間も増えていることだろう。

ちっちゃなことは気にするな! 石田瑳歩

小脇さんに部員のおはなしを聞くなかで、ひとり異彩を放つ人物がいた。ドンマイ担当の石田瑳歩さん(右シェーク裏裏)だ。小さなことは気しないDon’t mind精神の持ち主。ある日、キャプテンの小脇さんが石田さんとの練習中に驚いたのは、石田さんが使っていたタオルがタオルではなかったこと。なんと、持ってきたTシャツをタオル代わりにして汗を拭いていたのだ。「卓球台の枠にTシャツがかかっていたのでびっくりしました」と小脇さん。今度、石田さんの試合を観る時は、6点ごとのタオルタイムに何を使っているか注目してもらいたい。(帰宅時間が早くなったのだから、誰か石田さんと一緒にタオルを買いに行ってもらえないかしら)

帰ってきた盛り上げ番長! 松澤帆乃果

ここまで5名の部員を紹介したが、最後にもう一名、伝説の部員を紹介しよう。卓球部の盛り上げ担当である松澤帆乃果さん(右シェーク裏裏)だ。実は松澤さんは昨年、引退を考えたことがあった。卓球部員との小豆島旅行をはじめ、職場やそのグループとの飲み会などで、もれなく号泣。「部員ひとり一人に手紙を渡してくれて。それを読んで私も泣いてしまいました」と当時を振り返る小脇さん。彼女が悲しむのも無理はない。小脇さんにとって松澤さんは中学・高校時代からの大先輩であり、大きなリアクションでいつも笑わせてくれる松澤さんの姿がコートから消えたら……と想像するだけで寂しさがこみ上げた。あらためて、松澤さんの存在の大きさに気づかされたそうだが、1年たった今も小脇さんの隣には松澤さんがいて、しれっとラリーしている。卓球に対する情熱は、今も変わっていないようだ。

個性集団を束ねる神主の手腕! 中尾優子

はからずも個性が集まってしまった百十四銀行卓球部。部員を束ねるのは誰なのか。エクセディ出身の中尾優子さんだ。2年前に卓球部改革のタイミングで監督に就任した中尾さん。彼女は香川県の由緒ある神社・神谷神社の禰宜の一面もある。神々をまつり個々をまとめる中尾さんの采配はいかなるものか。小脇さんは「中尾さん以上に優しい人に出会ったことがない。しんどいことを一切顔に出さないんです」とその人柄を絶賛する。優子という名前の通り、優しさは神の領域らしい。練習中にボールが入らないと「もうっ」と声に出して自分に腹を立てる小脇さん。「その怒りのレベルが人より高い」と自己申告してくれた小脇さんにも、中尾さんは神対応というのだから間違いないだろう。

そんな監督の中尾さんは百花繚乱な部員たちのことをどう思っているのだろうか? 中尾さんにたずねると……。

「いろんな選手がいて微笑ましい。いつも元気をもらっています。卓球は個性を生かせるスポーツだと思っているので、どんどん自分を出して、その選手だけの卓球を一緒に作っていけたらいいですね」とのこと。多様性のあるチームだが、ここぞという時は一致団結してくれる頼もしいメンバーだとか。2年前からの運動部の改革も功を奏し、百十四銀行卓球部は今年度から日本リーグ1部に復帰した。そして、この満を持したタイミングで催される2025年度の前期日本リーグの開催地はホームである香川。会場はこの春オープンした「あなぶきアリーナ香川」だというのだから、百十四銀行卓球部の物語がさらに盛り上がりを見せることは間違いない。地元の大舞台でまずは上位に進出し、プレーオフへの弾みをつけることが目標という彼女たち。ぜひ多くの方に応援にかけつけてもらいたい。そして、このメンバー紹介を頭の片隅に置いて、ひとり一人に心を寄せてもらえれば幸いだ。