こちらは『卓球レディース』編集長の西村が、NOルールで綴る馬鹿馬鹿しい卓球日記です。今回のテーマは前髪。卓球の競技性による前髪おぶすの問題を放置してはいけない!

卓球レディースのみなさん。一度でいい、たった一度でいいから、練習前に鏡を見て問いかけてください。そこに映る自分の前髪におしゃれ心をなくし、あきらめの境地に達したのはいつ頃だったかと。記憶の隅オブ隅をつつけば試行錯誤の歴史が走馬灯のように浮かぶはずです。サイドへのアメピンめった刺し期、持ち上げてのちょんまげ期、額拡大覚悟のオールバック期……。前後左右の万策が尽き、絶望から達観へ。読者層の30~60歳のレディースなら誰もが通ってきた道ですよね。「もう過去のこと……」と記憶から葬り去らないで。そして思い出してほしいのです。前髪のアレンジに命をかけていた、うら若きあの頃を(きみまろ風)。

毎朝、カーラーとくるくるドライヤーで巻きに巻いて、フロンガスをたっぷり吹きかけて作った工藤静香よろしくの立体的なトサカ前髪。動くたびにファンファンと軽やかに揺れて、かわいくってナウい女子をアピールできる。確実に男子ウケを狙っていた時期があったはずです。しかし、その状態が部活の終わりまで持続できるのは、ラケット競技でいうと、テニスとバドミントン部員、以上。卓球部は活動時間帯に入ると、制服から練習着へ。ファンファンからアメピンビタ留め前髪へと同時進行でのルックスチェンジを余儀なくされました。なぜなら、ボール競技の中で球が最も小さいから。前髪が目にかかったら、メーカーロゴがはっきり見えないから。ナックルか下か、回転の見極めがつかないから……。

部活の休憩時間に水飲み場へ行くと、別の部活の男子に「あれ? 誰だっけ」的な視線を送られる。なんて身に覚えはありませんか? 同じクラスなのに、同じ委員なのに、なんなら同じ班なのに、と思ったところでむなしく、男子の目に映った自分の前髪を想像すると、その場からバックレたかったはずです。魔法がとけたシンデレラのように、前髪ひとつで個の存在が消えてしまう切なさ。「部活と恋愛は両立できるのか?」その永遠のテーマをつきつけられると、「前髪がコレなもんで……」とチキンになるのが卓球女子だったと記憶しています。 

そんな昭和の出来事が令和の今も続いているって聞くと、ただごとじゃありませんよね。そう、卓球女子の前髪の負の歴史はまだ刻まれ続けているのです。「美容室へ行ってきました~」なんて爽やかなノリでおしゃれな髪型をインスタグラムに投稿している卓球の女子プレーヤー。すごくキュートで思わず“いいね!”したのに、翌日、テレビで試合を見ると、「何があった???」っていうぐらい、髪の毛を縛り上げて、前髪をアメピンびた留め。あの姿を見ると、試合の内容がまったく頭に入ってきません。

前髪×暗黒×青春時代が自動的にフラッシュバックして「誰か解決策をー」と叫びたくなるのは私だけでしょうか? “部活初日、黙ってアメピンを渡してくれた無口ながらも老婆心に溢れる先輩。” “練習後、前髪が復活せず、彼氏を一人で帰らせたキャプテン。” ”引退試合、生え際から2センチほどのパッツン前髪で現れた気合上等の同級生。“ 過去のほろ苦い思い出を成仏させるにはやはり、卓球女子の前髪問題を放置してはいけない。その思いで選手の前髪を再現しました、写真はTwitterに一部あげています。これを見てそこにある問題に気づくべきなのか。その判断は見る方に委ねたいと思います。