企業で地道に活動する卓球部に光を当てたインタビューコンテンツ「行け! 〇〇会社卓球部」。今回取材したのは京都の精密機器メーカー・株式会社島津製作所の卓球部。学生の部活とは似て非なる大人の青春ストーリーをお届けします!
練習量と年齢の差は相殺される
7月27日~岐阜メモリアルセンターで開催された全日本実業団卓球選手権大会。京都の代表枠を勝ち取り出場した島津製作所の卓球部は、1950年創部の伝統を誇るチームです。2000年の節目に卓球部の歴史や規約、部員の定義を綴った「島津製作所卓球部50年誌」を発行する細やかさは、さすが精密機器メーカー。会社の敷地内にある体育館には4台の卓球台が常設され、練習球はオールスリスターという恵まれた環境で練習に励んでいます。
「他の企業チームから『うらやましい』と言われるのは、練習環境だけでなく、島津製作所の団結力です」と語るのは主将の真鍋伸一さん(53)。現在部員数は45名。経験者と初心者が揃ってランク別の大会に参加し、試合に出ていない時間は、他のメンバーの応援にまわる仲間想いの部員たちだそう。
「ある大会で、一番の年長者である大先輩の試合を総勢20名で応援していました。大接戦でベンチも盛り上がり、大声で先輩を鼓舞していたのですが、デュースから相手にマッチポイントを握られた時、先輩がまさかのサーブミス。トスしたボールがラケットの角に当たり、あさっての方向へ飛んでいくのを見て、全員でズッコケたのが良い思い出です」。
試合後のビールがさぞ旨かっただろうと想像できる真鍋さんのエピソード。そんな和気あいあいとした雰囲気に誘われて入部した古田哲朗さん(34)も、同卓球部への入部秘話を語ってくれました。「大学時代は卓球部に所属せずに社会人の大会に出ていました。そこで出会った島津製作所卓球部の人たちが上下関係なく話している姿を見て良い会社だなと。迷わず入社試験を受け、内定後すぐに練習に参加しました」。
人事向けのセミナーでこっそり教えたくなる斬新な青田買い成功事例。社員生活がスタートした古田さんは先輩から社会も教わったと言います。「卓球は大切やけど、優先しなあかんのは家族と仕事。卓球はその後でいい」。そんな人生訓を語ってくれた先輩が、週4で練習している事実を知った古田さん。何か思うところがあったのでしょうか、お子さんが生まれた現在は、練習を月2回に減らしています。
「うちの部で一番脂が乗っているのは50代の先輩方です。私たちは子育て世代なので、練習時間が思うようにとれません」。そんな泣き言を語りながら、古田さんらイクメン世代は、真鍋さんたち50代を相手にロビングを連発。肩の上がらなくなった先輩たちを容赦なく後ろに下げる戦法でゲーム練習に挑んでいます。練習時間の差を埋めるための秘策かもしれませんが、真鍋さんたちバブル世代もやられちゃいません。
「私たち50代は、世の中であまり使われていないラバーを使用し、奇をてらった戦術で30代に対抗しています。若い人は変化表のクセのある球を嫌がってくれるので」。
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歳の差を埋める秘策をトニセンも持っているようです。あ、失礼。※以下50代(トニセン)、30代(カミセン)V6より。
先輩の期待に応える一本はバトンとなり後輩へ受け継がれる
世代は違えども、カミセンとトニセンで切磋琢磨する島津製作所卓球部。古田さんは自身の卓球の成長は真鍋さんの采配にあると言います。「社会人リーグで5年間、真鍋さんと同じチームでした。50試合以上を共にさせてもらったのですが、全部の試合でトップとダブルスに起用してくだり、鍛えられました」。
古田さんをエース起用した理由を真鍋さんに伺うと……
「私も若い頃、同じような経験を先輩にさせてもらいました。私は自分の番が回ってくる前に試合が終わってほしいと願うタイプだったのですが、そんな消極的な私に先輩が期待をかけてくれたんです。先陣を切る貴重な経験をさせてもらい、成長することができました」。
次の世代の部員にも同じような経験を与えたいという古田さん。「団体戦の1番は特別感があります。勝ち負けも大切だけど、持てる力を出してチームを盛り上げることが重要。強い相手と対戦しても、少しでも点を稼いで『自分たちもできるぞ』というところを見せたい。その良い空気でチームの流れができる。この先、島津製作所の卓球部を引っ張ってくれる人には前に出ていってほしいですね」。
はじめに、カミセンとトニセンは年齢関係なく腕を磨き合う、飲み会で語り合う。上下関係のないフレンドリーな雰囲気が島津製作所卓球部の魅力と伺いました。
しかし、先輩は後輩の背中を押す役目をちゃんと果たしている。成長を見守ってる。そんな愛情が代々受け継がれているじゃありませんか。それも伝統のひとつとして、次の島津製作所卓球部 ”100年誌” にしっかりと記してほしいですね。
(あと、「2023年8月卓球レディースに載りました」という記録も(^_-)-☆)