企業で地道に活動する卓球部に光を当てたインタビューコンテンツ「行け! 〇〇会社卓球部」。学生の部活とは似て非なる大人の青春ストーリーをお届けします!
みんなの卓球台は二人だけの卓球台に
はじまりました「行け! 〇〇会社卓球部」。記念すべきVol.1でご紹介するのは写真代行販売事業を展開する株式会社ハッピースマイルの卓球部。部長を務める佐藤堅一さんは、会社の代表取締役社長でもあります。佐藤さんがオフィスに卓球台(一台)を置いた当初の目的は、社員同士のコミュニケーションを図るため。台を囲んで、社員たちがお昼休みにサークル活動を楽しんだり、社内の卓球大会「ハッピースマイルカップ」を開催したりと、佐藤さんの目論み通り、みんな仲良くワイワイと卓球を通じてコミュニケーションが円滑になりました。
が、そんな和やかな雰囲気を最初に壊したのは佐藤さんでした。
佐藤さん「それまで卓球は白いボールを叩き合うだけの、単純なスポーツと思い込んでいました。実際にやってみると回転のスポーツであることがわかり、その難しさとおもしろさにハマったのです」。
何かを始めるのに年齢は関係ないと、当時38歳だった佐藤さんは卓球教室に通い、真剣に卓球の練習を開始。1年後、「ハッピースマイルカップ」出場をきっかけに卓球のおもしろさに目覚めた社員・森川広平さんと二人で卓球部を立ち上げました。
佐藤さん「練習はほぼ毎日、1時間半~3時間ほどおこないます。休憩時間はありません。大人から始めたので練習量がないと上達しませんから」。
そんな負けず嫌いな佐藤さんのストイックさと練習量についていけるのは、創部から3年たった今も森川さん一人だけ。部員は増えませんが、むしろそれは佐藤さん、森川さん両氏にとって好都合。一台で効率よく練習するには2名が最適。一緒に練習動画を研究し、月に一度同じ大会にエントリーする。卓球台に響くのは、もはや社員同士の爽やかな談笑ではなく、激しい打球音。夕方になるとピンポンを楽しむ人の姿は消え、ガチな卓球部が卓球台を占拠するようになりました。
唯一人の後輩からの下剋上
まるで青春を謳歌する学生のようなお二人の活動は微笑ましくもあります。
が、そんな爽やかな先輩&後輩関係を最初に壊したのは森川さんでした。
森川さん「とにかく社長に勝ちたくて、毎日帰りの電車で練習動画をチェックし、社長の弱点を研究しました」。
実は森川さんも佐藤さんに引けを取らない負けず嫌い。佐藤さんから一年遅れて卓球を始めたにもかからわず、一緒に練習を始めて一年後には佐藤さんを追い抜いてしまったのです。
森川さん「2021年の暮れに、二人で出場したP4マッチでついに社長に勝ちました。その日、社長は8戦全敗で、今まで見たことがないくらい落ち込んでいて、心配になりました」。
落胆した佐藤さんを気遣いながらも、同氏に打ち勝った喜びとともに気分よく年を越した森川さん。2022年は新たな目標を掲げてスタートするつもりでした。
が、森川さんの意気揚々とした卓球ことはじめを台無しにしたのは佐藤さんでした。
森川さん「年始に社長とお会いして、練習したらボールがうまく返せない。おかしいなと思ったら、社長がフォアに裏、バックにアンチラバーを張っていたんです」。
どんだけーーーーー!!!! MAKEZUGIRAI
勝つためにはアンチの神をも味方につけるその心境はいかに???
佐藤さん「思うように結果が出ないことに悩んでいたら、年末にある番組で石川佳純選手がとんねるず相手に失点していたんです。石川さんが『アンチだ!』と叫んだ、その言葉が気になり調べると、使っている人が少ないラバーだとか。それなら対策が練られないのではと、5種類のアンチラバーを取り寄せて研究しました」。
その中で佐藤さんが一番しっくりきたラバーはヤサカの「アンチパワー」。猛特訓のすえ、サイドを切るスローボール、上回転に見えるバックハンドなど、森川さんを含むほとんどの人が嫌厭するアンチ特有の技を覚え、その2ヵ月後のP4マッチでは8戦全勝、見事に優勝を果たしました。
佐藤さん「フォア面はいろいろ試したすえ、テナジー25に落ち着きました。私は負けを用具のせいにしたくないので1ヵ月に1回の頻度でラバーを張り替えます。使用後のテナジー25は森川に譲るので、彼のギアの半分は僕のお下がりでできているのです」。
と、用具でもマウントをとる佐藤さん。ところが、最近は森川さんも佐藤さんのアンチボールに慣れてきたのだとか。二度目の下剋上に戦々恐々とする佐藤さん。その場合、アンチの次の一手は何になるのか興味深いところです。
が、その前におさえておきたいのは同社の移転。今年の9月に埼玉県の大宮へ。オフィスの拡大とともに、卓球台も1台増えて2台になる予定だそう。
森川さん「卓球台が増えたら部員を募集したいです。仲間が増えるといいな」。
佐藤さんと森川さんが築き上げた卓球部の牙城は近づくと火傷しそう。果たして門を叩く勇者は現れるのか? ハッピースマイル卓球部の部内ランキングに今後も注目です。