武士はたすき掛けに刀、卓球選手は腰ひもにラケットでいざ勝負!
3月某日、撮影のため大阪から岐阜へ車で3時間の移動。おかぴーさんのスタジオに到着すると、最初にもてなされたのは一杯のお茶ではなく、一本のひもでした。「長時間のドライブ疲れたでしょう~」そう明るく労いながら、イスに腰かけた私の両膝に否応なくひもを巻きつけてくるおかぴーさん。「これは一体何の儀式?」と思っている間に、全身の力が抜けていく不思議な感覚に見舞われました。
「身体がひもを頼りに、本来のバランスに戻ろうとするんです。過緊張がとれる気がしませんか?」とおかぴーさん。確かに両膝をひもに預けるだけで、膝から頭のてっぺんまで瞬時にゼロ点校正される気がします。
「ひもを巻いて身体が整う感じを内観すると、卓球のパフォーマンスも上がるんですよ」と続ける。なるほど、それで試合動画では謎のひもを巻いている姿が見受けられたんですね。
一見、「しっぽとりゲーム」のしっぽを取り忘れた人と勘違いされかねない格好ですが、ギックリ&椎間板ヘルニアと腰にバクダンを抱えるおかぴーさんにとって、このひもは身体のバランスに気づく物差しなのだとか。
「腰のひもに少し気を配るだけでいいんです。ひもがガイド役になるので、身体が緊張し過ぎているところはゆるみ、ゆるみ過ぎているところは適度に緊張して、腰だけでなく全身のバランスに気づくんです。また、ひもを使ったトレーニングを習慣にすると、身体本来のありようにスイッチが入って、使い癖から生じるケガもしにくくなるみたいですよ」。
試合前にはひもを使った体操をルーティーンにしているおかぴーさん。そもそも、ひもによるトレーニング(略してひもトレ※1)は古武術がベースになっているのだとか。たすきがけや、わらじまきなど、ひもを使って身支度を整えておくと、身体がぶれず、とっさに動くことができる。そんな先人の知恵が詰まっているそうです。
ならば、私も左右に振られて足がもつれる卓球スタイルから脱却できるかもしれません。これは何としてでも滞在時間内に詰め込み教育で覚えて帰りたい。お茶を飲んでいる暇はなさそうですね。
※1 ひもトレとはバランストレーナー小関勲先生発案のメソッドです。
用意するものは、長さ2m30cm、太さ6~8mmのひもだけ。縄編みでない伸縮性のあるヒモを選んでください。
①後屈運動
1、肩幅の長さに、ひもで輪を作り結びます。
2、交差して両手にかけ、上体を反らしていきます。
3、両腕を反らして後屈運動。2、3回を目安に無理のない範囲で行いましょう。
②腕を左右に振る体操
1、①と同じ手順で交差したひもを両手にかけ、両腕を突き上げて開きます。
2、腕を左右に2、3回大きく振ります。
3、ひもに身体を預け、ひもが緩まないように伸ばしましょう。
③いないいないバー体操
1、①と同じ手順で交差したひもを両手にかけ、両腕をバンザイのポーズで上に伸ばします。この時、手のひらは外に向けておきます。
2、両手を内側に返しながら、両腕を下にひきます。ひもが頭の後ろを通るようにしましょう。
3、そのまま両手を顔の前に持っていき、いないいないバーの動作で両腕からしっかり開きます。
4、1~3の動作を繰り返します。2、3回が目安。
④脚の運動
1、股関節の幅の長さに、ひもで輪を作り結びます。腰をおろして、足を伸ばし、両足にかけます。
2、ここから、両足を腰のほうに引き、伸ばす運動を2、3回程度。膝はまっすぐに揃えたまま、つま先を意識しましょう。
失敗例)膝が開いた状態で脚を引き寄せるのはNGです。
ひもトレのポイントは……
①ひもに身体を預け、ひもが緩まないようにする。
②動作は無理なく心地よい程度に。
③ビフォーアフターの変化を内観(自分との対話)する。
④回数や時間は目安であり、決まりではない。
以上4つを心がけて、無理のない範囲で行って下さい。
教わった4つの体操を通して行うと、2分ほどで終了。慣れれば1分でできそうですね。その後、変化を知るために、ひもを外して同じ動きを試しました。腕に柔軟性が出て、肩の可動域が広がった気がします。もちろん、個人差はあると思いますので、みなさんもぜひ一度試してください。1点をとるために、藁ではなく、ひもにすがってみる価値アリですよ!
卓球Life supporter おかぴー
卓球YouTuber。技術&試合動画は400本以上、総視聴回数は1,451,000回を超える。p4matchの運営や、個人指導、講習会の開催(年10回以上)など卓球に携わる活動は多岐にわたる。全日本卓球選手権マスターズの部30、40代優勝者。