パラ卓球選手や強豪校卓球部の外部コーチを務める堀杏子さん。ヨガインストラクターながら、卓球界に“呼吸法”で貢献されています。試合中のパフォーマンスとメンタルを上げる鼻呼吸とは? そのメソッドとメリットを聞きました。

卓球YouTuberおかぴーさんから卓球に役立つ呼吸法があると聞き……

寒暖差で鼻づまりが気になるこの頃、ある卓球場で卓球YouTuberのおかぴーさんとバッタリ再開。「寒くなると体が冷えて困るわ~」なんて世間話から、呼吸トレーニングをすすめられました。トレーニング法は簡単で鼻から息を吐くだけ。シンプルながら、首、肩、肩甲骨などの緊張緩和に役立つのだとか。

おかぴーさん

この呼吸法を始めると……

緊張しにくくなる・慌てての打ちミスが減る・身体が動きやすくなる この3つをすぐに体感できますよ

なんですとーーー!!!

整体を取り入れたレッスンが人気のおかぴーさん。古今東西の調整法を学び、ここ最近の施術レベルは神の域との噂も耳にします。そんなゴットハンドの持ち主がすすめるメソッドなら間違いない。私は、おかぴーさんの師匠であり、呼吸法の本家であるヨガインストラクターの堀杏子さんを取材しました。

打てない!勝てない!を解決する方法は“全集中の呼吸”にあった

堀さんが実践するメソッドは南インドで4万年の伝統を誇る「プラブヨガ」というもの。時間配分が独特で、9割の時間を準備に費やし、1割の時間でポーズをとるのだとか。2018年に日本に伝わると、「ヨガなのにヨガしない」と和製ヨギーニの間で話題に。

堀杏子さん

プラブヨガでは準備のひとつ、呼吸の指導を大切にします。呼吸をしながら体を動かすと、脳の指令が体の部位に伝わるからです。動きがにぶっている部分も感覚が目覚めます

コケコッコー! 

感覚が目覚めるなんて興味深い。中年世代は肩が回らない難民の巣窟ですから。私も目が覚めてほしいポイントは肩周りに点在してしています。できることなら10代の思い切りの良いスマッシュ。あの台に確実に入る感覚をもう一度取り戻したい。切に。堀さん、私の寝ぼけた体を叩き起こす呼吸法を教えてください!

「3拍で吐いて2拍で吸う」呼吸の基本

呼吸

はじめに、1.2.3とゆっくりしたカウントで鼻から息をスーッと吐きます。

次に1.2のカウントで口を閉じたまま鼻から吸います。息を吐いた分だけ自然に入るので、力まなくて大丈夫。

肩の可動域が広がるウォーミングアップ

両手を背中側で組み、胸を開く。その状態で、呼吸をしながら組んだ腕を上下する運動。そして、腕を伸ばし耳にくっつけて鼻呼吸する運動。その二つをウォーミングアップに取り入れると、フォアハンドが振りやすい肩に。

股関節の可動域が広がるウォーミングアップ

呼吸をしながら片足ずつひねりを加える運動。股関節の動きが軽やかに。

呼吸法3つのメリット

そして、おかぴーさんが言っていた呼吸法の3つのメリット「・緊張しにくくなる・慌てての打ちミスが減る・身体が動きやすくなる」。これらの理由も堀さんに伺いました。

WHY?緊張しにくくなる

人は緊張すると交感神経が優位になり、全身の筋肉が引き締まります。一方で鼻呼吸は副交感神経を優位にさせる呼吸法。筋肉が弛緩して心のこわばり(プレッシャー)からも解放されます。試合前に適度な緊張感は必要ですが、過緊張は体が硬くなってしまいます。パフォーマンスに悪影響が出る前に、鼻から息をしっかり吐きましょう。

WHY?慌て打ちが減る

慌てている時は息が上がるもの。その状態では冷静なプレーができません。まずは呼吸法を実践して脳にしっかりと酸素を届けましょう。頭の中がクリアになり、落ち着いたプレーが叶いますよ。また、鼻呼吸をすると鼻周辺の血流が良くなります。鼻の周りは視神経が集まっている場所なので、視界もクリアになり、ボールが良く見えるようにもなります。

WHY?動きやすくなる

鼻呼吸はウォーミングアップに最適です。吐く息に合わせて体を伸ばすと、各パーツの感覚が目覚めるからです。卓球は非日常の動作。いきなりやっても思い通りに動きません。まずは鼻呼吸しながら全身を動かしたり、触ったりして体とコミュニケーションをとりましょう。

一日の終わりにひと呼吸

この世に産み落とされてから、ほぼ口呼吸生活の私。鼻呼吸にシフトできるのかしら? と首をかしげたら、「鼻呼吸を始めると、顔のたるみも改善しますよ」と堀さん。

シャキーン!!!

私はこの金言を授かった瞬間から、鼻呼吸ができるようになりました。馬にニンジン、西村にリフトアップ効果。欲張って「痩せますか?」と聞いたら「もちろん。鼻呼吸は横隔膜の運動なので、お腹も引き締まりますよ」と堀さん。鼻呼吸を継続できる自信が急に湧いてきました。とはいえ、「いきなり日常化するのは難しい」という方もいますよね。そんな人は一日一回だけ鼻呼吸をすればいいそう。思い出した時に、寝る前に、一日に溜め込んだストレスを全部吐きだす気持ちで、鼻からフーッと吐いてください。ひと呼吸だけでも続けたら、気持ち良くって、毎日続けたくなっちゃうかもよ(^_-)-☆

監修者 堀 杏子

呼吸コーチ・ヨガインストラクター。舞台演出家・蜷川幸雄氏の劇団で女優として活躍した後にヨガの世界へ。呼吸を中心としたプラブヨガの指導に当たる。現在はパラ卓球選手や高校の卓球部などの外部コーチも。卓球界に呼吸を通したパフォーマンスの改善を広めている。全米アライアンスRYT500保有。著書に「息を吐くだけでカラダの不調が消える呼吸革命」(フォレスト出版)がある。