試合のパフォーマンスを向上させる睡眠について、上級睡眠健康指導士・樋口まりさんに話をうかがいました。試合の前日に緊張して眠れないとお悩みのレディース必見です!
そもそも人はなぜ眠るのか?
脳を持つ動物は、脳を休ませるために眠ります。イルカは24時間活動できるよう右脳と左脳を交互に眠らせる半球睡眠、キリンは食事に時間を割くため20分の短時間睡眠。眠り方はさまざまですが、脳の器官を持つ動物は眠らないと生命の危機に陥ります。ギネス記録で264時間起き続けた人も妄想や記憶障害といった変調をきたしました。研究でも不眠が心身に悪影響を及ぼすことが明らかになっています。万全のコンディションで試合に挑むためには、睡眠のメカニズムを知って眠る時間を確保することが重要です。
「勝つために寝る」その具体策
眠りの仕組みは恒常性維持機能と生体時計機能にあります。体のオーバーヒートを防ぐため疲れたら眠くなり、体内時計が働いて夜になると眠くなるのはこのためです。ところが、体のリズムに相反する何かが起こると眠れないことがあります。例えば卓球の試合前日、緊張やストレスが眠りのメカニズムを妨げるというケース。試合で良い結果を残すには頭と体を休めることが必要なのに、これでは本末転倒ですよね。良質な睡眠は翌日のパフォーマンスを向上させます。「勝つために寝る」と心得て、以下の5ヵ条を前日の行動スケジュールに組み込んでください!
睡眠サイクルを整える5ヵ条
布団に入る時間を計算すべし
一般的に睡眠時間は7~8時間がベストと言われていますが、あくまでも統計学上の話。睡眠の質によって適切な睡眠時間は変わります。自分が一番寝覚めが良い睡眠時間を把握しましょう。6時間睡眠が快適な人は、起床の6時間前に布団に入る習慣を身に着ければOK。もちろん、試合の前日だけでも構いません。ちなみに、朝起きてから4~5時間後、体温が上がりきった頃がベストパフォーマンスを発揮できる黄金時間。試合が10時からなら6時には起きたいところです。
お風呂は寝る2時間前に入っておくべし
体温が高いと交感神経が優位になり眠れません。入浴後は体を冷ましてから布団に入りましょう。
食事は寝る3~4時間前にとるべし
お腹に食べ物が残ったままで寝ると消化作業が脳へ刺激を与えます。布団に入る3~4時間前には食事を終えましょう。また、カフェインやお酒は抜けるのに時間がかかるため試合前夜は控えるのがベター。特に寝酒はアルコールが切れたときに覚醒するので注意しましょう。
スマホは寝る1時間前に電源を切るべし
眠りは最初の90分が大事と言われています。眠りの準備が整っていれば最初の90分で深い眠りに到達し、睡眠の質が上がります。ギリギリまでスマホやテレビをみていると、目からいろんな情報が入って脳が休まらず入眠を妨げます。また、ブルーライトが覚醒の原因になるので、スマホは寝る1時間前に見終わるようにしましょう。
寝る前に戦術を考えるのはやめるべし
寝るときの心癖で明日の試合の戦術を考える人もいるでしょう。試合前日のルーティーンかもしれませんが、寝ることを目的にするなら考えないこと。頭を切り替えてリラックスしないと質の良い睡眠がとれません。夜は生命を維持する分泌物をしっかりと出して、記憶と記録の整理が整った朝に戦術を立てることをおすすめします。
寝つきを良くする方法
頭のマッサージ
頭頸部に緊張があるとリラックスできません。四肢の筋肉は頭部ともつながっていて、緊張すると頭皮が硬くなるからです。ブラッシングで頭皮の緊張を解きほぐしましょう。お風呂に入る前におでこの生え際から後方にとかすだけでOK。とかし方は自由でかまいません。湯舟につかりながら、頭皮を指でぎゅっとつかんでぱっと放したり、手をグーにして、頭全体をグリグリすると、さらに血流が促されます。
丹田腹式呼吸
布団の中で丹田腹式呼吸をしながら眠りにつきましょう。呼吸が整うと脈拍や心拍数が下がり、自然と睡眠に導かれます。肺が広がるよう仰向けに寝たら、息を吐き切り、鼻から吸って口か鼻で吐きます。シー(吸う)スリープ(吐く)、「シースリープ」と心の中で唱えながら行うとリズムが整います。吸う時間の倍の長さでゆっくりと吐くようにしましょう。
それでも眠れない場合は……?
いろいろ試して、それでも眠れないという方は一旦布団から出てみるといいかもしれません。電気を消したまま、布団から離れたところで休息します。ストレッチなど脳に刺激を与える運動は控えて、ただ座るだけ。落ち着いたらもう一度布団に入ります。それでも眠れなければ、「今日くらいは眠れなくてもいい」と開き直ります。眠ることはあきらめるのです。翌日、昼休憩に15~20分ほど目をつむれば疲労もとれます。外からの情報を遮断すると脳が休まるので、前日に眠れなかった人はここでリラックスしてください!
監修 上級睡眠健康指導士 樋口まり
一般社団法人日本睡眠教育機構の上級睡眠健康指導士。企業に向けた睡眠セミナーの講師として活躍
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