卓球の試合で自分を鼓舞できるパワークラッシック音楽とは? サウンドクリエイターの上久保愛さんにおすすめの5曲を選んでもらいました。試合前に聴けば緊張がほぐれてモチベーションもUP。心のウォーミングアップにクラシックの名曲をどうぞ!

クラシック音楽にすがり集中力を高めたかった学生時代

受験生の頃、α波教の信者だった私。“脳波がα波の状態だと、集中力が高まって実力以上の力が発揮できる”。その新説に心を躍らせ、お年玉でα波系のクラシックCDを借りまくりました。

CDを借りた時の“やりきった感”は参考書を買ったときと≒。参考書を買うと、まだ勉強を始めていないのに、なんなら1ページ目すら開いていないのに、テスト勉強を終えたような達成感に包まれました。

脳からどんな快感ホルモンが放出されたのかわかりませんが、私は参考書の媚薬効果をCDに求め、片道30分の雪の夜道、息をハアハア切らしながらチャリンコをかっ飛ばしてレンタルCDショップへ向かいました。今思えばあの時間が一番ゾーンに入っていた気がしてなりません。

そして、手にしたCDを聴きながらの勉強、卓球、家庭科の宿題だったニット帽のくさり編み。各シーンにおいて己の実力不足をアルファ波で補えたかどうかはわかりませんが、CDをリピート再生し続けた結果、社会人になってからも頭の中でそれらの曲が収録順にヘビーローテーションしておりました。

そして冬になると、父がガタガタのくさり編みニット帽をかぶって、新聞を取りに出る姿が風物詩となり、α波クラシック音楽を頼りに最後まで編み切った自分を誇らしく思えるようになりました。

このように私の青春に伴走してくれたα波クラシック音楽。α波が出ようと出まいと、やはりクラシック音楽の力は偉大なりということで、今回は卓球の試合前に聴きたいパワーソングならぬ、パワークラシック音楽をご紹介します。誰もが知っている有名な5曲を厳選。監修はサウンドクリエイターの上久保愛さんです。脳から出るのはαかθかβか測定はしていませんが、試合のモチベーションと集中力が高まることは間違いありません。パワークラシック音楽を聴いて、憧れのゾーンプレーを実現させましょう!

試合前に聴きたいクラシック5曲!

1曲目 ハチャトゥリアン作曲「剣の舞」

「冒頭からテンポよく刻まれるティンパニの音に注目。音の高さが上下に分かれ、卓球のラリー音を彷彿させます。1試合目の前に聴くと、身体の中にリズムが生まれて、スムーズにゲームオンできそうです。またメロディを奏でる木琴は、ラケットと同じく木材からできています。卓球人にとって馴染み深いウッドが奏でる音色を聴きながら、試合の成功イメージを膨らませましょう。最後に「ダンッ!」という大きな太鼓音で曲が締めくくられるように、見事なスマッシュで試合が終われたらいいですね!」上久保さん。

2曲目 ドヴォルザーク作曲「家路」

「卓球の研鑽の日々を振り返ることができる一曲。イングリッシュ・ホルンの温かくのびやかメロディを聴きながら、努力を重ねた月日に思いを馳せましょう。練習後、家路に向かう途中で目にした茜色の夕焼けが、試合前の緊張や不安を和らげてくれます。『これまで頑張ってきたから大丈夫』と心を落ち着かせたいときにぜひ聴いてほしい」上久保さん。

3曲目ビゼー作曲「アルルの女」第4曲『ファランドール』

「イントロは勇壮な行進曲。会場から卓球台へ、堂々とした強い気持ちで歩んでいく姿が浮かびます。中間部分はフルートと木琴のリズミカルなかけあい。スピード感溢れる卓球のラリーとシンクロしながら、心を音楽から卓球の世界へと誘います。すると、徐々に厚みを増すオーケストラの壮大な演奏は、試合会場で声援を送る観客のボルテージの高まり。静かな曲調への切り替わりは、ゲーム途中のタイム。そして明るく速いテンポを保ったままエンディングへ向かう場面は、勝利への確信。そんな試合の成功イメージを思い浮かべられるようになります」上久保さん。

4曲目 エルガー作曲「威風堂々」

「卒業式の入場曲としてなじみ深い『威風堂々』。その名の通り、力強く威厳に満ちあふれた1曲です。聴くだけで、笑顔が浮かび自信に満ちた気分になれるのは、明るく弾む長調ならでは。大切な試合の日は、会場の入り口から卓球台まで歩いていくときの“心のBGM”にしてほしい」上久保さん。

5曲目 ベートーヴェン作曲「歓喜の歌」(交響曲第9番<合唱>第4楽章)

「試合に勝利して表彰台に立っている自分が想像できる。そんなエネルギッシュで高揚感あふれる一曲です。試合前はこの曲を聴きながらイメージトレーニングを。潜在意識にドライブが決まる自分の姿を植え付けましょう。成功体験がイメージできるようになると、退屈な基礎練習も勝つために必要な行動と前向きにとらえられるようになります。うんざりするような1本1本のフットワークも集中できるようになれるかも……?!」上久保さん。

【監修】 上久保 愛(ONIGIRI SOUND PROJECT)

ゲーム音楽やBGM,サウンドロゴを手掛けるサウンドクリエイター。3歳からピアノとエレクトーンを始め、9歳から作曲活動を開始。「ジュニアオリジナルコンサート」など、楽曲制作のコンテストで数々の受賞歴を誇る。各BGMストックサービスにてオリジナルBGMの販売も。

「音楽に携わる人間として、音楽の力を信じています。今回紹介した曲が、あなたの卓球人生の大きなサポートとなれば幸いです」