いつぞやの親子ダブルス

こちらは『卓球レディース』編集長の西村が、NOルールで綴る馬鹿馬鹿しい卓球日記です。どうやら私は家族とのダブルスに不向きのようです。

身内には卓球上手が一人必要

子供とのスキンシップを楽しめる時期なんて、あっという間に過ぎるもんですね。子供も小学校最後の学年となりました。一緒に卓球できるのもこれで最後だろうと、ローカル大会の親子ダブルスにエントリー。子供には内緒でお揃いのウエアを買い、2週間後に控えた試合に向けて、ひとりで闇練を始めました。しかし、その矢先に子供がインフルエンザにかかり、私もそのウイルスを受け継ぐかたちで、ふんわりインフルに。ダブルスどころか卓球の練習すらできないまま、親子ダブルス大会当日を迎えました。

準備はできてないけれど、そもそも大会参加の目的は、子供との思い出づくりです。つまり親子の絆醸成。負けたっていいのです。気楽にやればいい。1回戦で当たったお母さんと大学生の息子さんペアも和気あいあいとした雰囲気で、どちらかがミスをすれば「ドンマイ」と笑って和やかに試合をすすめられていました。きっと勝ち負けよりも親子のイベントを大切にしたいのでしょうね。春の訪れを告げるような爽やか空気が伝わってきました。

私たち親子も対戦ペアに見習って、一試合一試合を楽しまなきゃ。得点するたびにハイタッチしよう。お揃いのウエアで記念撮影しよう。そんな晴やかな気持ちで試合に挑みましたが、こちらが1ゲーム先制して休憩に入った瞬間、私はあることに気づいてしまいました。「あれ、さっきから息子はナックルのショートサーブしか出していない？？？」息子に理由をたずねると……。

息子「だって、ぼくが切れたサーブ出したら、お母さん返ってきたボールをレシーブできないやろ」。

BA、BAKANISITORU―――(-_-メ)

いや、シェーク両ハンド世代がなめんじゃねーよ。こちとら、お前さんがこの世の空気に触れる前からオールフォアの片面ペンでがんばってんだからよ（心の声）。

私は息子のひと言で2ゲーム目から完全に青鬼のスイッチが入ってしまいました。私のレシーブ後、子供が異常に下がる姿に「お母さんのレシーブはうたれる」とバカにされている気がして「下がるなー」と叱咤。ほかにも「お母さんのレシーブが心配なら、一発で決まるサーブを出せ！」などと、試合中に無理難題を言い放ち、相手ペアがドン引きするほど喧嘩上等なダブルスを繰り広げてしまいました。

結果は1-3で逆転負け。なんでやねん。私は行き場のない悔しさを息子にぶつけました。「お母さんが丁寧につないでるのに、あんたは……」。私が息子にダメ出しをしていると、周りから熱い視線を感じました。それは試合の健闘を讃えるほがらかなものではなく、私たち親子の仲を気にかけた冷ややかなもので。

「大丈夫かな～。親子ペアでも試合してるうちに熱くなってくるからね～」と、シニア卓人がしょんぼりした息子を心配してくださっている声も耳に入ってきました。そして、恥ずかしくなったのか、息子は走って会場を出ていきました。

ああ、やってしまった。せっかくの親子卓球なのに。穏やかにできなかった、ハイタッチできなかった、記念撮影できなかった、そして、そして負けた（チーン）。。。。。

ほかのペアはどうなんだろう。喧嘩ひとつせずやってるのかな？　周りを見渡すと、Tリーグ並みに激しいラリーの往復が見られるコートが。あれっ？？？　なんだかうま過ぎない？？？　ここは郊外にある試合会場のはずなのに、クラブのコーチと思わしき方とのペアや大学の卓球部のようなペアがおられました。今大会の親子ペアの定義は、三親等までのはずなのに、みなさんどれだけ身内に最強タッグが組める卓球上級者がおられるのか。

私の身内ときたら、元国体選手たけど認知症で入院中の93歳の母、卓球歴4年だけど初級沼を脱けられない夫、卓球習ってるけどナックルサーブしか出さない息子。二～三親等に卓人はいないものの、一親等にこれだけ卓球やってるメンツがそろっているのも珍しい。でも、誰と組んでも勝負できる気がしない。。。。。

おお～い、一親等！！！

頼れる誰かがいないなら、自分が卓球頑張ってダブルス巧者になるしかない。相方が下がる前に一発でしとめるフリックができるようになるしかない。一発で決まるサーブを出せるようになるしかない。

私は1年後の親子ダブルスに向けて、それから数日間、卓球場でサーブ練に励みました。すると、居合わせた卓球仲間のNさんに「パパさんから親子ダブルスの試合動画見せてもらったけど……」と声をかけられ、続けてNさんに「あれは仕方ないって。ママさんのレシーブ浮いてたもん。息子くんは下がるしかないわ」と言われました。真実を告げる思い切った表情で。

はっはっは、そうでしたか～。

本当のこと言う人、きらい( ；∀；)