2024年7月26日に開幕したパリオリンピック。卓球の日本選手は男女団体、混合ダブルス、男女シングルスに出場。その試合の感想を初中級のレディース目線で綴ります。
パリオリンピック卓球は男女ともシングルスが終了。
すべての出場選手のみなさま大きな感動をありがとうございました。
今回の五輪は、琴線の触れどころがいつもと違ったな。本来なら日本を応援する立場なのに、気づけば北朝鮮・中国・スウェーデンなど各国の選手のプレーに涙し、エールをおくっておりました。何も語らずともパリオリンピックを目指した選手たちの3年間がその体からあふれてくるから。
例えば、北朝鮮のピョン・ソンギョン選手。初めてのオリンピック、初めての対戦相手におぼつかない様子で、ゲームの初めは身体が硬く、ふり遅れてボールがラケットの芯に当たらない。ところが、ゲームが進むにつれ、対戦相手の抜けるはずの一打がピョン選手のラケットにピタッと吸いつくように。俊敏性が上がるにつれ、プレーも攻撃的に。時間が彼女の真の実力を浮き彫りにしていったのです。どんどん調子が上がるダークホースに、ディアスもひなちゃんも7ゲームの怖さを思い知らされたのではないでしょうか。
オリンピックは非日常の大会。人・物・場所に何が起こるかホントにわかりませんね。
物と言えば、王楚欽のラケットが折れたというニュースには驚いた。少年マンガじゃなくてリアルの話ですよね? 混合ダブルス金メダルの喜びに浸る時間は一瞬だったんじゃないかな。青天の霹靂。霹靂の時間の方が長いし、その時間を引きずりそう。ところが、本物の王様は懐が深い。スペアラケットで戦ったスウェーデンのモーレゴード選手に負けると、「ラケットの影響で負けたわけではない。彼が強かったからだ」と神コメント。さすがと思ったけど、リアルコメントだった???
だって、トルルスくんが強い強い。樊振東もトルルスくんにだけは決勝で当たりたくなかったんじゃないかな。王楚欽選手がトーナメントから消えて、はからずも中国の最後の砦となってしまった樊振東選手。張本戦あたりから、顔色が悪かった。ブルベ過ぎるくらい青白かったもの。その状況で、中国選手お得意のラリー戦に持ち込まない相手との対戦なんて。トルルス君のカットにこだわる変幻自在の回転プレー。見ている方はおもしろかったけれど、樊振東はずっと笑えなかったんじゃない。いや、笑ったな。第4ゲームでトルルス君がネット際にスネーク級に曲がるロビングをかえしたとき。樊振東選手が手を伸ばすと、へびはバタフライに昇華してトルルス君のコートに戻った。その時の樊振東選手の血色感のある笑顔ったら。緊張と緩和のある素晴らしい決勝戦を見せてもらって、ありがとうございました。
さて、場所と言えばホームで活躍したルブランくんですよね。フランスのサポーターの熱くにぎやかなこと。隣コートの中継を見ていても「フェリックス!」の掛け声が入ってきた。ルブランくんの拡大写真を持っているおじいちゃんもいたし。地元の方は親戚気分なんじゃない。孫のように愛されているのがわかりますもの。そして、その応援を味方につけて、見事に今大会最年少の17歳での銅メダル獲得おめでとうございます。
最後に、人と言えば早田ひな選手ではないでしょうか。腕の痛みを抱えながらの準決勝と3位決定戦。ハラハラして見ておりました。私は弱っている人に「身体が一番大切だから」とよく慰めるのですが、身体よりも大事なものが人生には突然現れることがある。早田選手にとってそれは五輪メダルだったのでしょうね。早田選手の場合、身体だけでなく選手生命にもかかわる状況だったと思います。3位決定戦のシン・ユビン選手とのラリーが熱を帯び、早田選手が鋭いバックハンドを放つたびに、「もってくれ」と祈るような気持ちでおりました。そして、驚異の忍耐力で早田選手は勝利をものにしますが……。
私としては勝ち負けなんてどうでもいい。試合が終わってから見せた“ひなスマイル”にこそ金メダルの価値がある。早田選手、団体戦も笑顔で駆け抜けてくださいね!