こちらは『卓球レディース』編集長の西村が、NOルールで綴る馬鹿馬鹿しい卓球日記です。引退発表から一夜明け、石川佳純ちゃんへの熱い想いを綴りました。佳純ちゃんのファイトに何度勇気をもらったことか。一ファンとして大感謝!

ついにこの日が来てしまった。石川佳純選手(30)が現役を引退しました。まったく予測できなかった! なんてことはない。思えば昨年、石川選手が子供教室を開きながら全国を巡るサンクスツアー。「我が子も参加させよう」と思っていたのに気付けば大阪を通り過ぎていた。あの辺りから胸騒ぎがしていたのです。そして今年に入ってから一念発起のYouTube開設。石川選手の笑顔が画面に近づけば近づくほど、選手としては遠い存在になる気がした。知らず知らずのうちに心の準備が整う体制に入らされていたのかもしれません。

とはいえ、かすみんロスが半端ないー。

発表を知った瞬間から目に涙を浮かべて仕事をしておりました。明日からGWで本当によかった。新垣結衣が結婚した時は特別休暇を出した会社もあったみたいだけど、「おい、休ませてよ」ってサンドイッチ状態の平日に叫んだ卓人もいたでしょうね。

小学生時代「愛ちゃん二世」と呼ばれて脚光を浴びた時もあったけど、「この子は誰かの二番煎じを演じるキャラではない」と、私はテレビ越しに予言していました。黒髪のショートヘアにメガネ。クラス一まじめで目立たない印象だけと、瞳がとってもキラキラしてたんです。のちに全農のCMを見ても白米に負けないくらいツヤツヤと輝く。そしてそのメガネを外したら、ピュアなキュートさが露わになって、髪の色や長さをいじったら印象が変わって、気付けばグローバルスキンケアSK-Ⅱのアンバサダーに。全農のCMは10代~30代へ、佳純ちゃんの美の変遷をたどることができる絵巻物だな。

そしてあの美しく洗練されたドライブのフォーム。テレビに佳純ちゃんの試合が映るたびに「見なさい!」と家族を呼ぶ係の私。お手本にと正座して見入っても、才能の問題や40肩の制限や我流のクセなどがコピペを阻む。佳純ちゃんの卓球は遠かった。唯一、髪型は完コピできましたよ。いきつけの美容室へ行き、佳純ちゃんが映るクリアファイルを見せて「同じ髪型で!」と無茶ぶりオーダー。美容師さんも私の本気を感じ取り精一杯似せてくれました。東京五輪前に佳純ちゃんが黒髪に戻した時は、そんなことして浮かれてる自分に嫌気がさしましたが。

東京五輪の選考レース中は、私も親の介護があったりして、そのしんどさを紛らわせるのに必死だったんでしょうね。日本女子選手を応援することが私の現実逃避だったかもしれません。石川選手のプレーが生で観たくて、認知症の母を連れて強行突破でTリーグを観に行ったこともありました。そして応援に熱中していたら気づけは母がいなくなっていた。広い会場を隅から隅まで探したけど見つからない。パニックに憔悴して席に戻り会場を見ると、なんとこれから石川佳純ちゃんが入場しようとするゲートに母が立っているではありませんか!!!!

私は慌てて1階へ。係の人に止められている母を引き取りにいきました。おかげで佳純ちゃんを間近で見ることができた。身長は私よりも少し高いはずだけど、低い印象。骨太な私とは違い華奢だからかな。こんな小さな体で陳夢や丁寧相手にパワー負けしないプレーを見せてくれていたのかと思うと頭が下がりました。

そして、佳純ちゃんの体から湧き上がり会場中を包み込むような強気のオーラ。15年前、テレビ越しに感じたのはこの他の追従を許さない空気だったのではないかと。唯一無二の女王の風格を漂わせながら、勝ったらぴょんぴょんジャンプだなんて、あざと可愛い過ぎませんか。この落差におばちゃんはノックダウンされてしまうのです。

世界選手権の混合ダブルスで金メダルを獲った時も、ワールドツアーで陳夢に初めて勝った時も、私は佳純ちゃんの表情が崩れる瞬間を見てもらい泣きしたな~。私の中で泣き虫の筆頭は愛ちゃんではなく、佳純ちゃんでした。スレたおばちゃんにキレイな涙のおすそ分けをありがとうございました。

そして心から、お疲れさまでした。