ドレスコードは卓球日本代表のウエア

こちらは『卓球レディース』編集長の西村が、NOルールで綴る馬鹿馬鹿しい卓球日記です。今回は五輪の影響でユニフォームがどれだけ売れているかレディース卓球の現場から報告します！

この夏の東京五輪。卓球日本代表の活躍は印象深いものでした。ジャパンレッド＆ブルー。日本代表のウエアも目に焼き付いています。「かわいいな～」と思っていたら、行きつけの卓球場でオフィシャルユニフォームを着てプレーされるレディースが続出。発売後すぐにこの状況でしたから、さぞかし売れたんでしょうね。じゅんみまペアの金メダル獲得で卓球ファンの熱量は冷夏の日本列島をHOTにさせるほど高まったから。メーカーとしても思惑通り。いやそれ以上かな。「こんなに多くの人が五輪で卓球を観ていたんだ」と驚くほど、新規の卓球ファンも増えましたしね。

緊急事態宣言があけると、固定の卓球ファンも卓球場へ勢いよく羽ばたきました。お預け状態が解除されたんですから。私の元へも練習のお誘いメールがじゃんじゃんと届きました。なかでも嬉しかったのは1年半以上お会いしていなかったレディース仲間からのお誘いです。「大会に向けて練習しましょう」とのこと。みなさんの元気な顔を見たくて意気揚々と出かけました。

場所は近所ながらも初めてお邪魔する卓球場。勝手がわからず館内をウロウロ……。ようやく人が集まる卓球ルームを発見し中に入ると、数年前の日本代表のレプリカユニフォームをお揃いで着たガチ集団と目があいました。「し、失礼しましたっ！！！」。私は慌てて部屋から飛び出そうとしましたが、脳にスクショされた画像を冷静に見ると、知っている顔顔顔。1年半ぶりの再会とはいえ忘れることはありません。正真正銘、私のレディース仲間です。

西村「どうしたんですかそのガチなユニフォーム？？？？？」

久々に会う先輩にかける言葉としては失礼極まりない第一声。思わず口から飛び出してしまいました。今まで近所の体育館に家着で集まるのが暗黙のルールだったからです。我らのオフィシャルウエアは着慣れたTシャツ＆ジャージ。ユニフォームに着替える時間なんてないもんでね。

土曜日は19時から始まる練習のために、18時50分までに大急ぎで夕食後の洗い物を済ませる。ビニール手袋を外し、玄関でサンダルをひっかけ、そのままの勢いでママチャリに乗り、ツール・ド・フランス並みのスピードで体育館へ。台を出してひと息つくと、皿洗いで飛び散った水がTシャツに地図を描いていることに気づきます。だけど「冷たい心地悪い」なんて言ってる暇はありません。ラリーが始まると数分後には汗でTシャツ全体を濡らすことになるんですから。首に巻いたタオルで汗をふき、「あれ。これお皿をふいたタオルだっけ？」なんて思ってる暇もありません。すぐに「そろそろ試合しよー」となるのですから。

“ママさん卓球”なんて可愛い呼ばれ方しますけど、主婦たるもの練習時間を作るのに必死のパッチ。びちゃびちゃのTシャツ、用途のわからないタオルなんて、誰も気にしません。周りを見渡せば同じ格好の同士がいるんですから。

NA・NO・NI、今日は誰もそんな人がいない。この卓球場にはドレスコードが存在するのでしょうか？？？？？

Oさん、Hさん「安かったから買ったのよー」

安さゆえに買ったとのお返事でしたが、そんなことには騙されないゾと私はジャーナリズム精神でつっこみました。

西村「もしかして五輪の影響ですか？」

Oさん、Hさん「そうそう。すごい試合やったね～」

照れ笑いするOさん＆Hさん。やはりそうかと腑に落ちました。Oさんいわく、さらにウエアを2枚購入したとのこと。さらにさらに個人レッスンを受け始めたとのこと。Oさん、わかりやす過ぎます！！！！！

卓球業界の術中にハマってしまったOさん。帰りに卓球場に併設されているショップへ連れて行ってくれました。ショップの扉を開けると、目の前に「セール！　すべて2000円！」のポップを掲げたワゴンが置かれていました。ワゴンには型落ちのウエアがびっしりとかけられていて。

Oさん「安いやろー。ここに来るたびについ1枚と買ってしまうねん」

卓球ショップの術中にもハマったOさん。私もセール品を物色したところ、つい先日、正規の値段で購入したばかりのスコートが半額以下になって売られていました。値札をガン見しながらショックのあまりフリーズしていると。

Hさん「西村さん、どうしたの？」

西村「普通の値段で買ったスコートが半額以下になってて」

Hさん「えーっ、ショックやなー」

西村「まぁでも、はいた感じすごくかわいいスコートなんで許します……」

このようにムゴたらしい事件もありましたが、その後もこちらの卓球場へは定期的に5人くらいで集まり、我ら卓球レディースTeamsは大会に向けて腕を磨きました。おかげでOさんの新しいウエアをひと通り拝むこともできました。

練習の帰りは必ずみんなで併設のショップに立ち寄るのですが、来るたびに2000円均一のワゴンが大幅に減少。びっしりかけられていたウエアが3週間後には３～4枚になっていました。反比例するように、卓球レディースメンバーのウエアが潤沢になっているような……。練習仲間の新しいウエアを見ると「卓球レディースTeamsのメンバーが買い占めているのでは？」と疑わざるを得ません。しかし、これだけ安いのだから早く売れるのは当然。自分が知っている世界だけで物事を推し量るのは間違っている。気にしないことにしました。

練習を再開して1ヵ月後の大会当日、Hさんに会うと珍しくスコート姿。今まで気づかなかったけど、Hさんって足のラインきれいやなーと見とれながら視線を上げると、なんとあの時のスコート。私が値段の落差に涙を飲んだスコートをはいておられました。

西村「Hさん、そのスコート……」

Hさん「ああこれ？　いつものショップで安かったのよー」

間違いありません。あのワゴンを空にした爆買い犯は卓球レディースTeamsです。