こちらは『卓球レディース』編集長の西村が、NOルールで綴る馬鹿馬鹿しい卓球日記です。11月22日、京都にあるKBSホールへ、京都カグヤライズとトップおとめピンポンズ名古屋の試合を観に行ってきました。KBSホールは京都出身の私にとっては思い出の場所。その懐かしい思い出と共に試合観戦を振り返りました。

御所西のKBSホールでTリーグを拝める日が来るなんて……

ご無沙汰しております。ギリボロさま。KBSホールに再び訪れる機会をいただき、誠にありがとうございます。ギリボロさま。いえ、ギリシャボロンさま。天衣無縫の小学生時代にそんなあだ名をつけてごめんなさい。ギリシャ神話に登場しそうな装束で、たて琴をボロンとならしているご様子で、KBSホールの壮麗なステンドグラスの壁からこちらを眺めておられた。そう、私が小学生の時にKBS主催の書道大会で「初日の出」と筆を走らせていた時、お母ちゃんとおばあちゃんとあなたの優しいまなざしに見守られていたことを思い出します。

そして40年近くたった今では、なんと貴殿は卓球を観賞なさっていたんですね。京都カグヤライズのホームがKBSホールになった瞬間から。えっ、あの場所で、卓球??? と私もひとりでザワついておりましたよ。そして、11月22日に開催された京都カグヤライズのホーム戦でようやく足を運ぶことができました。元京都人の私にとってもホームと言いたくなる思い出のあのホールへ。

小学生の書道大会では床に下敷きを敷き、参加者は横並びで床に向かって書をしたためていたものですから、このフロアがどこまでも続く平野のようで、そのだだっ広さに感動しておりました。そのかがんだ体勢から、ころころと横に転がっていけば、参加者全員をドミノのように倒していけるな、なんてクスッと想像しながら。

そして、大人になった今、再びホールに足を踏み入れると……。あれ? こんなサイズ感だったかな。。。なんだかホールをコンパクトに感じる。その中央には卓球台があり、天上からの光を集めていて、周囲は海を囲む小高い丘のように観客席が出現していたのです。まさに「天地創造」。ガラス工芸作家の徳力氏によるステンドグラスのテーマがここに具現化されているとは。

そして、その床に転がるのは書道女子の私ではなく、白いボール。転がってきたボールをボールガールがお花を摘むように優しく拾い上げていました。なんというか、これが新時代のKBSホールのありようなんですね。いや、もったいねぇ~、もったいねぇ~。お向かいさんは御所という京都の中心地で、ギリボロさまと一緒に大好きな卓球のプロの試合が観られるなんて。KBS京都っ子が大好きだった「もったいないお化け(©公共広告機構)」が大きなつづらに帰ったいま、KBSホールを熱くにぎわすのはTリーガーで間違いないでしょう。

だって、出雲美空選手のナックルバックの後のたたみかけるような早い打点のスマッシュ。小塩遥菜選手の不死鳥が羽を広げたような美しいカット。菅澤柚花里選手の裏面でのしゃがみこみサービス。木村香純選手の泣く子も黙る重量級のパワードライブ。などなど、生でチェックしたいプレーが手に届きそうな距離で拝めたんだもの。

見どころも満載で、第2マッチの菅澤柚花里VS小塩遥菜では、マッチポイントで小塩選手がカットではなく、下がったところからロビングを繰り出し、そのボールが菅澤選手のコートにポトンと落ちた。その落下地点が絶妙で、ネットとコートの右端を結ぶ2等辺三角形エリア。私は思わず「うおっ」と唸り声をあげたんだけど、菅澤選手はそのボールをスマッシュで小塩選手側の対角である二等辺三角形エリアに優しく入れ返した。う~んお見事。そして私はその光景を見た瞬間、二等辺三角形エリアにあるものが見えました。そう、キッチンにある三角コーナー。この位置に三角コーナーを置けば、絶妙な位置にロビングを返す練習ができる。そのような天啓を得てしめしめとほくそ笑んだのでした。

学びはほかにもありますよ。第4マッチの出雲美空VS永尾尭子では、一進一退の展開のなか、出雲選手がバック対バックから先に仕掛けて、ストレートへ。しびれるような爽快な展開でした。異質独特の鈍行のようなボールスピードが球質のいやらしさを物語ってたわ。そして再び同じ展開になった時も、ボールがストレートにコートを駆け抜けていく爽快感を想像したけれど、そこはベテランの永尾選手。見事な対応力でボールをループで返球。これは勉強になる。レディースは異質選手が多いから、卓球ノートの1ページ目にメモらねばと思ったけれど。よく考えたら、そんな技術、バチバチ系のあたいにはないね。

この第4マッチでは出雲選手が勝ち点をあげて両者は2-2に。ビクトリーマッチにもつれこみむと、最後は小塩選手が勝ってトップおとめピンポンズ名古屋が勝利しました。名古屋の選手のみなさん、ファンのみなさん、おめでとうございます。

何よりも見ごたえたっぷりのゲームが卓球ファンにとって最高のご馳走でした。きっとギリボロさまも両選手の一本が決まるごとに、天に向かってたて琴をボロンボロンとならしたんじゃないかな。このKBSホールから新たな卓球の創造が生まれることを喜んで。