人生で何個ピンポン球を割りましたか?

美しく崇高な球体。人類にとってそれは地球、女性にとってそれは真珠、そして卓球人にとってそれはピン球。宇宙空間を内包する白きプラスティック。天界に連なる星たちは「三つ子座」の名前を捧げたくなるほど誇らしげに輝く。自転や公転といった自己中心性を手放し、誰かの摩擦による下回転に身を任せる潔さ。どんなに突ッツキ離されても、相手のところに戻ろうと身を翻すさまは、無償の愛を象徴する。

だからこそ言わせてほしい。「簡単に踏まれるな」と。多球練習中の子どもの足元に転がったら最後、「ブチッ」という哀れな音とともに、その完全性が姿を消す。親たちが虫取り網で必死に玉を拾うのは、我が子の安全を守るため、我が子の練習時間を減らさぬため、だけではない。「もったいないことをするなよ!」という道徳教育の一環で足元に目を光らせているのだ。だからこそピンポン玉にはプライドを持って、白い胸を張って「踏んじゃダメ、絶対」のオーラを放っていただきたい。自分の身を守るのは、結局自分しかいないのだから。

ピンポン玉に覚悟はできた。卓球人はどうだ?

ピンポン玉を扱う皆さん。「踏んでいいのは韻とブレーキ、割っていいのは卵とお酒」。まずはそのことを頭に叩き込んでいただきたい。こんなことを書くと「わかってるって」と幻聴さえするが、思春期の男子学生の「わかってるって」という、かったるい返事は90%以上の確率で理解が伴わないことを母親世代ならご存じであろう。学生時代、後輩の男子に「ボール拾って」と注意しても「わかりましたー」と言いながら拾いに行かない。予定調和のやりとりに嫌気がさしたこともあった。

それでも当時はたった1個のトレ球を大事にしながら練習に励んでいたと思う。ボールが遥か彼方に飛んでいくたびにダッシュ。フェンスを越え、隣で練習している剣道部の隙間を縫い、柔道部の畳が積まれたテトリスの壁に到達。畳と畳の隙間に手を突っ込んでピン球を探し出し「お邪魔しました~」と剣道部にヘコヘコ頭を下げながら走って戻る。現代卓球のスピード感からすると、何百ラリーに相当する時間を玉拾いに費やしたわけだが、これが逆に集中力を生んだ。

何度も拾いに行きたくないから、目の前の1本を台の中に収めたいとワンスターに願う。基礎練習なら相手のとりやすい場所に返したいとツースターに祈る。そして絶対なくなるな割れるな部費なくなるとスリースターに拝む。つまり、ピンポン玉を大事にするという意識は、相手コートに入れる、ミスをしないという意識につながるのだ。だから私は子どもに言って聞かせる「ボールを大事にしなさい」「ボールを拾いなさい」。口うるさいBBA(ババア)と思われたって仕方がない。

だけど、子どもは私の言うことを聞き流す。なぜなら……ブチッ。「嗚呼、また踏んでしまったー」。カカトに伝わる嫌な感触。わざとじゃない。望んでもいない。だが、親が踏んでちゃ説得力はゼロ。ごめんなさい。南無阿弥陀仏。せめてもの償いに、割れピンのリユースを啓蒙しようと思いまーす。

今回、5つの卓球場に協力をお願いし、1日の利用人数と割れピンの数を教えてもらいました。割れピンの数を利用人数で割ると0.914。つまり卓球場を利用する人は、1日およそ1個ピン球を割るということ。申し訳ない気持ちでいっぱいになりますね。私も利用人数に含まれていますから。製造メーカー、卓球場、ピンポン玉の三方に土下座。

割れピンのリユース法

ピンポン玉リユースのお手本のようなカードスタンド。作り方は簡単。割れピンの上に長方形の穴をあけるだけ。お好きなカードを挟むだけ。以上。安定感を求める人は、砂か何か重しになるものを底に入れてもいいそう。卓球場のカードスタンドはこれに決まりですね!

満足度★★★★★

大好きなあの人の大切な記念日。プレゼントに迷っている人は、割れピンにメッセージを込めてはいかがでしょうか? 絵心があってもなくても問題なし。割れピンならひとこと書くだけでも様になります。さりげないサプライズで相手に好印象を与えましょう!

満足度★★★★☆

底がひしゃげた割れピンに足指を乗せると、爪が上をむいた状態で固定されてブレません。思いのほか、ペディキュアが塗りやすいんですよね。おまけに、塗りたい指が持ち上がるので、ほかの指が邪魔にならないのもポイント。割れピンでおしゃれができるなんて、卓球女子だけの特権ですね。

満足度★★★☆☆